第508号

508号
2024年4月30日

      趙大鵬先生に会いに行く

 2024年の元日に起きた能登半島地震。能登半島沖の深さ15㎞を震源とするM(マグニチュード)7・6、最大震度7を観測する大地震となった。
 専門家によると、その震源は2020年ごろから続いている群発地震の震源域で、この群発地震は地殻深部から上昇した水のような流体が原因で発生したと考えられている。それにより断層が滑りやすくなっていて、さらに複数の断層が連動したことで大地震になったようだ。
 テレビや新聞で能登半島地震のメカニズムを見たり、読んだりしていて、12年ぶりに東北大学大学院理学研究科教授の趙大鵬さんに、その後の研究で明らかになったことなどを聞きたくなった。春になるのを待って連絡し、4月19日、仙台の青葉山のキャンパスにある地震・噴火予知研究環境センターを訪ねた。

 趙さんたちのグループは体のなかを画像化して病気を調べるCTスキャンのような「地震波トモグラフィー」という方法で、地球内部を画像化して地震の発生などを研究している。2012年2月に発行されたヨーロッパの専門誌には「東京電力の福島第一原発のそばにある双葉断層で、直下型地震が起きやすくなっている」と発表している。
 東日本大震災の一カ月後にM7・0、震度6弱の直下型地震を起こした、いわき市南部の井戸沢断層の地下の画像と、原発事故を起こした福島第一原発の地下の画像が似ているという。それを知って、すぐに地震・噴火予知研究環境センターにある趙さんの研究室に出向き、応接室の壁にパワーポイントで映し出された画像を見ながら、P波やS波など一から丁寧に教えてもらった。
 それから12年、青葉山のキャンパスはすっかり変わってしまい、キャンパス内のあちこちで道を尋ねながら約束の時間に遅れてようやく辿り着いた。趙さんはまったく変わらず、玄関前で笑顔で待っていてくれた。パワーポイントと資料が準備されていた講義室で、同じようにたっぷり2時間ほど趙さんの説明を聞き、矢継ぎ早に質問した。

 4月17日には豊後水道を震源とする地震が起き、気がかりなのはやはり、これからの地震の発生。趙さんは「2011年の東北沖巨大地震(東日本大震災)はM9クラスの地震が起きたわけですから、プレートを傷めているのではないかと思います。マグニチュードが1違うと地震のエネルギーは32倍違います。双葉断層の地震はいつ起きても不思議ではないので、最新技術を駆使して注意深く見守り、原発の耐震性をしっかりすべきと、前に言った通りです」と話した。
 そして「地震の場合、発生する場所については言えますが、その時期は無理です。地層は硬かったり、軟らかかったりさまざまあって、どれが直接、地震に結びつくかわかりません。いまの地震学は100年前の気象学のレベル。いま、天気予報ができるけれど、100年前はできませんでした。新しい技術や研究環境が整えば、もしかしたら100年後、地震予知ができるようになるかも知れません。でも東大のアメリカ人教授のロバート・ゲラー先生は『地震予知は根本的に不可能』と断言しています」と続けた。


 特集 趙大鵬先生の地震のはなし 12年経って

東北大学大学院の趙大鵬さんを12年ぶりに訪ねた。趙さんのグループは東日本大震災後、「地震波トモグラフィー」という方法で地価の状態を画像化し、ヨーロッパの専門誌に「福島第一原発で直下地震が起きやすくなっている」という趣旨の論文を発表した。今年に入って能登半島地震など大きな地震が起こっているなか、この12年の研究でわかったことなどを聞いた。

地震が発生する危険性のある場所を把握


はじめに
大地震のほとんどはプレート間地震
東北地方の三種類の地震
内陸地殻地震
沈み込んでいるプレート内地震
おかしい地震

地震の研究について語る趙さん
 記事

いわきエブリアのこと

運営会社の変更でテナントが撤退
テナントが思うように入らないいわきにあって、いわきエブリアが大きな岐路に立っている。運営会社の変更で既存テナントが次々と撤退し、いまはがらがらの状態。「6月に再オープンする」というのだが…。


地域発――豊間のいま
 
住民主導のまちづくりで人口が戻ってきた
3.11で八五人の犠牲者を出した豊間地区のまちづくりが活発だ。世帯数は震災前を追い越し、歌会子育て世代の移住も目立つ。住民主導のまちづくりを貫いて成果を出している豊間地区の現状を取材した。

 

 


また、くまのはなし 

あなたな好きな詩を教えてください
3月1日、常磐湯本町浅貝と川前町小白井でくまの目撃情報が相次いだ。湯ノ岳で十数年にわたってくまの痕跡を記録している三浦芳治さん(71)にくまのこうどうなどについて話を聞いた。


詩と音楽の集いのこと

あなたな好きな詩を教えてください
「草野天平・梅乃が愛した詩と音楽の集い」が4月21日、東京都世田谷区のサローネ・フォンタナで開かれた。25年目の節目の会。メンバーたちが自分が好きな天平の詩を披露した。


日々の本棚
『ジジィの文房具』
沢野ひとし著
講談社


わたしの本棚
『おばあちゃんの庭』
文・ジョーダン・スコット
絵・シドニー・スミス
偕成社


シネマ帖
「コット、はじまりの夏」



 連載

木漏れ日随想(17)
去りゆく日々


 コラム

刊Chronicle 安竜 昌弘

文房具依存とは 

まず使い込んで自分に合ったものを
探していくその道程が大事