第520号

520号
2024年10月31日

    大切なのは、傲慢を戒め
    謙虚な政治家であり続けること

 衆議院選(10月27日投開票)が終わり、政権与党の自民・公明両党は過半数割れに追い込まれた。裏金議員への処分が迷走したうえに、公示後、非公認候補者が代表を務めている自民党支部に2000万円が振り込まれていたことがわかり、自民党への信頼は地に墜ちた。物価が上がり続けているのに手取りが増えない生活実感も大きかったと思う。今回の選挙では立憲民主党、国民民主党がそうした不満票の受け皿になり、議席を伸ばした。
 選挙情勢を伝える各紙やテレビは「与党の過半数割れも…」と流していたが、正直なところ半信半疑だった。しかし開票速報で裏金議員が次々と落選し、自民党や公明党の候補者が苦戦している現実を目の当たりにして、有権者の怒りと意思を感じた。

 公示直前だった。区割り変更で浜通り全体が選挙区になった福島4区に立候補する3人から話を聞いた。同学年同士の44歳と45歳で、全員が新人。震災・原発事故で苦しんでいるこの浜通り地方はこれから、どうすべきなのか―。原発に対する考え方や海洋放出、エネルギー問題について切り込んだ。党派の違いはあるにせよ、3人は質問をそらすことなく、自分の考えを述べた。
 今回、85751票を獲得して当選した坂本竜太郎さん(自民党)は「いま原発をなくして電力が成り立ちますか? 電気は必要なんです。こうなったのは国のせい、と言っても抽象的で実体がない。地元の議員が責任を持って確実に安全に廃炉を進めなければなりません。それが政治の責任です」と言った。
 知名度不足ながら78708票を集めて接戦に持ち込み、比例で復活当選した齋藤裕喜さん(立憲民主党)は「最終処分場が決まっていない原発の再稼働・新設はあってはなりません。それは将来に負担を強いることになりますから。デブリを取り出すのは100年かかっても困難だと思っています。報道されているのも福島の復興の姿ばかりで、現実との乖離があります」と答えた。
 3回目の挑戦で19879票に終わった熊谷智さん(共産党)は「国は原発をやめずに、これからますます原発を動かして行く、と言っています。浜通りの人たちはそれに傷つき『私たちの13年は何だったのだろう』と落胆しています。これからの電気は再エネが『いい』とか『だめ』というのではなく、地域に暮らしている人たちの合意のもとで安全性を確認しながら、地域のための発電を進めて行くべきです」と話した。

 浜通り地方の衆議院議員は中選挙区の時代から、与野党がバランスよく存在してきた。ただ自民党の国会議員はいつの間にか全員が旧安倍派になっていて、選挙民の思いを代弁するのではなく、国のいいなりになるケースが目立った。震災・原発事故のあとでさえ、そうだった。
 だからこそ、坂本、齋藤両議員には永田町の論理に染まってもらいたくない。議員になって「先生」ともてはやされると胸が反り返って傲慢になりがちだが、それでは市民からそっぽを向かれてしまう。「温かい心ときれいな手」をしっかりと胸に刻み、真摯で謙虚な議員であり続けることを願っている。


 特集 賢治の東京

 37年の短い人生で9回上京した宮沢賢治。なかでも1921年(大正10)は新工場の問題で父と対立シテ家出したこともあり、約8カ月間と一番長い滞在だった。いわき賢治の会は10月22日、小野浩会長の案内で本郷、千駄木などを回った。そのゆかりの地巡りの様子を紹介する。

37年の生涯で9海上橋。父との対立で家出しての滞在も
賢治と東京
本郷界隈のはなし

冬の夕方、光太郎のアトリエを賢治が訪ねた
賢治と光太郎のはなし

最後の上京で発熱。死を覚悟
八幡館のはなし
帝国図書館のはなし
国柱会のはなし

上野の森には歴史が潜む
旧因州池田や表門(黒門)のはなし
野口英世銅像のはなし

ギャラリー見てある記
現実を幻想にしてしまう画家
田中一村展

 記事

2024衆議院選

同学年の戦いを坂本氏が制す
第50回衆議院選が投開票され、新四区(浜通り全域)は自民党新人の坂本竜太郎さん(44)が当選。立憲民主党の齋藤裕喜さん(45)も比例で復活当選を果たした。選挙戦を振り返る。


止められない私の歩み 斉藤とも子さん 1

蔵カフェ第20回講座が10月14日、備中屋本家彩斎菊で行われ、女優の斉藤とも子さんが「広い島から、あちらこちらと、福の島-止められない私の歩み」と題して話した。その思いや生き方を何回かに分けて紹介する。

勉強する意味をタイで教わる
芸能界での戸惑い





道草をくいながら
山形、福島と接する七ヶ宿町は芥川作家、古山高麗雄の父の出身地として知られている。好転に目郡まれた10月13日、車で七ヶ宿を訪ね、自然や蕎麦、古山の文学などにふれた。

ダム建設で集落が湖底に沈んだ
宮城県七ケ宿町

亡き父とつながっている場所
古山高麗雄と七ヶ宿


原発は民主主義と相容れない
平野克弥著『原発と民主主義』を読んで
先﨑千尋


 連載

木漏れ日随想(29)佐藤晟雄
原城跡に思い残す九州の旅


 コラム

刊Chronicle 安竜 昌弘

『真吾の恋人』のこと
記事を通して人と人がつながる喜び