| 538号 2025年7月31日 |

洞察力と想像力
参議院選中盤の土曜日の夕方、家路に向かう車中でTBS系(福島県はTUF)の「報道特集」を聞いた。時間的にもう特集の締めくくりで、メーンキャスターの山本恵里伽さんがちょうど話をするところだった。
「外国人政策が争点に急浮上するなかで、これまでは、そこまで注目されていなかった強硬な主張が急に支持を集め、社会が決して受け入れてこなかった排他的、差別的な言葉がSNSで拡散していく。そういった現実に、正直すごく戸惑いを感じている」と言い、さらに「実際に外国籍の人とまったく関わらずに生活している人はほとんどいないと思う。学校の友達だったり、職場の同僚だったり。ひょっとしたら自分の1票がそういう身近な人たちの暮らしを脅かすものになるかもしれない。これまで以上に想像力を持って投票しなければいけないと感じている」と続けた。
聞いていて胸が熱くなった。山本さんの言葉をきちんと受け止めて、それぞれ投票をしてほしいと思った。その山本さんの発言が直後から「偏向報道」と物議を醸し、選挙が終わってもくすぶっている。調べて見ると、その日の特集のテーマは「争点に急浮上〝外国人政策〟に不安の声」だった。
放送から3日後、日本ペンクラブは「私たちはこれまで過去の反省に立って多文化共生社会をめざし、多くの自治体ではそのための条例も施行され、少しずつでも前進してきた民主主義社会が、一部政治家によるいっときの歓心を買うためのデマや差別発言によって、後退し崩壊していくことを決して許しません。有権者がいま1度立ち止まり、自分の1票を大切に行使することを願います」と、緊急声明を出した。
選挙が終わったあと、フリーアナウンサーの古舘伊知郎さんは自身のYouTubeの「古舘伊知郎チャンネル」で「山本恵里伽アナウンサーは何一つ悪くない。反対の意見を言っている人もいっぱいいることもわかった上で、いいことを言ったじゃないか、と私は思っています」と、自身の考えを述べた。
ポピュリズムという言葉がある。大衆迎合主義、民衆主義などと訳され、排外主義と結びつきやすい傾向にある。歴史を振り返ると、このポピュリズムの運動が最初に始まったのは19世紀末のアメリカだが、トランプ大統領の最初の誕生やイギリスのEU離脱を問う国民投票が行われた2016年に、世界的に注目された。
日本では1990年代の「失われた10年」で混迷を深めていった政治不信によって登場し、劇場型政治と言われた小泉純一郎さんがその最初とも挙げられている。そして、この7月の参議院選をめぐる動きでポピュリズムがはっきり現れたと指摘される。
2016年に『ポピュリズムとは何か』(中央公論)を出版した政治学者の水島治郎さんは「ポピュリズムは人民の立場から問題提起を行うと同時に、権力を握った場合に暴走するリスクもある」と言っている。「ポピュリズムを全面的に受け入れることは危険だが、無視することにもリスクがある」と。それぞれ洞察力と想像力が必要になる。
| 特集 いわきから甲子園に出るのは |
私立勢に押され、いわき市内から夏の甲子園出場校が30年途絶えている。そうしたなか、市の肝煎りで「いわき市甲子園プロジェクト」が立ち上がった。「いわきの野球の連携・交流ネットワーク」をめざしての動きだというが、はたして打開策になるのだろうか。これまでの歴史や現状を踏まえ、高校野球関係者などから話を聞いた。
飛ばないバットの導入で公立校にも望み
常磐炭礦の功績
私立の時代に
新しい時代に向けて
人間の成長なくして野球の進歩なし
福島ベースボールプロジェクト代表理事 磯崎邦広さんのはなし
双葉郡の5校を継承 指導者の異動ネック
ふたば未来学園高校監督 遠藤太さんのはなし
私立倒せる公立校をつくる
湯本高校監督 小野裕久さんのはなし
野球の継承立が低いいわき
磐城高校監督 渡辺純さんのはなし
魅力のある高校が必要
湯本高校OB 大平健司さんのはなし
甲子園プロジェクトの設立

| 記事 |
吉村昭と『彰義隊』
関連の地を歩き証言や資料を集める
『彰義隊』は吉村昭最後の長編小説。その「奥羽列藩」の章には茨城県平潟港に上陸した主人公の輪王寺宮が、いわきを通って会津へ向かう様子、「仙台」の章には磐城平城の落城が描かれている。いわき市立草野心平記念文学館で開かれている「吉村昭と磐城平城」(9月21日まで)に合わせて、吉村の人生、いわきの郷土史家との縁などを紹介する、
小説家への道
戦史小説と歴史小説
『彰義隊』の執筆
小説家らしからぬ普通の人
郷土史家 小野一雄さんのはなし
小野さんは2002年7月27日と翌2003年の7月1日、いまは亡き佐藤孝徳さんなどと吉村さんをゆかりの地に案内した。

| 連載 |
阿武隈山地の絶滅危惧種 ⑮ 湯澤陽一
ヒカリゴケ蘚類 絶滅危惧Ⅱ類
木漏れ日随想(47)佐藤晟雄
何故言えぬ本当のこと
| コラム |
「収まらないで」
穏やかな水面に投じられた
一石のような言葉
