| 547号 2025年12月15日 |

深く知るほどジレンマがまとわりつき
立ちつくす いわき信用組合問題
いわき信用組合の問題を、引き続き取材している。
一連の問題が明るみに出るきっかけになったのは、昨年9月8日、元いわき信用組合職員によるX(旧ツイッター)への書き込みだった。そこには「自分の知っている範囲で、いわき信用組合が隠蔽してきた不祥事件や不正会計(粉飾決算)について発信していきたいと思っています」とあった。それをきっかけに、いわ信は大きく揺らいだ。大口融資先への不正融資、反社会的勢力への資金提供や常識の範囲を超えた融資が明らかになり、江尻次郎会長など旧経営陣が辞任に追い込まれた。
いわ信をめぐる問題には不可解なことが多い。Xを投稿したのはだれなのか、2つの支店で2億円以上も横領した職員が懲戒解雇にならなかったのは、どうしてか…。2つの報告書をいくら読み込んでも、関係者から話を聞いても、霧がかかっているみたいにぼんやりとしていて、真実が見えて来ない。それもあってじっくりと腰を据えて取材をすることにした。
そうしたら驚いたことに、公益通報者であるXの投稿者と、大金を横領していた元職員が同じ人物らしい、ということがわかった。しかも、いわ信は横領された金を回収するために不動産関連の会社を設立、この職員を取締役にしてアパート3棟の収益を返済に充てさせていた。しかも、そのための必要経費7700万円は、いわ信が融資するかたちをとり、青年会議所活動にも参加するようになった。
ところがこの職員は、元同僚の免許証を偽造して口座を開設し、500万円をだまし取る詐欺事件を起こしてしまう。いわ信は「これ以上続けさせるのは無理」と判断、アパートを売却し、会社の設立資金などを回収した。
この職員のことを思う。東北大学の経済学部を出て、いわき信用組合に入り、将来を嘱望されていた。結婚し、男の子が生まれたが、3・11の津波で失った。そのころから競馬やFX(外国為替証拠金取引)にのめり込むようになり、大きな損失を横領で埋めるようになった。
公益通報という正義と、億単位の横領という犯罪。「罪を憎んで人を憎まず」という、ことわざ。そして「思考を拒否するとモラルまで判断不能になり、信じられない行動を起こしてしまう。思考の風がもたらすのは知識ではなく、善悪を見分ける力。私が望むのは考えることで人間が強くなること」というハンナ・アーレントの言葉。深く知れば知るほど、さまざまなジレンマがまとわりつき、立ち尽くす。そして「報道とは」を自らに問いかける。
地域に根ざして存在してきた、いわき信用組合の問題は複雑で、一筋縄ではいかない。だから一過性で終わらせてはいけない。さまざまなものを抱えながらもきちんと向き合い、問題の本質を伝え続けなければ、と肝に銘じている。
| 特集 いわき信用組合問題の真実 |
反社会的勢力から脅され続ける
いわき信用組合が反社会的勢力から脅され、さまざまな融資や活動資金の提供をしていたことなどが明るみに出て、揺れている。員悠長に新たな改善計画を提出すると共に、旧経営陣を民事と刑事の両面で告訴するという。この問題の本質を探るために2つの報告書を読み解き、関係者から話を聞いた。
権力争い
4代目理事長・新妻長蔵が現場から退いたことをきっかけに鈴木勇夫氏と遠藤誠一氏の間で主導権争いが勃発した。
ワンマン体制
8代目理事長の江尻次郎氏は理事長・会長を20年務め、権力を握った。
事のてんまつ
X(旧ツイッター)への投稿をきっかけに闇が白日の下にさらされた。
「帳簿をきれいにしたい」という思いから組合員が朝日新聞にリーク。
ある疑問
2億円を横領しながらも、いわ信を離れたあとも不動産会社をつくってもらい、取締役になっていた元職員はなぜXに投稿したのか? いわ信はなぜ、この職員に対してこれほどまでの措置をとったのか?

| 記事 |
はなみずき書店のはなし
小さな空間にこだわりの本を置く
福島県立美術館で学芸員をしていた荒木康子さんが自宅(福島市森合丹波谷前)の一室を改修してオープンした「はなみずき書店」が間もなく1年を迎える。1冊1冊選んだ本が800冊ほど並び、少しずつ地域にとけこんでいる。
くまのはなし2025
熊鈴などで存在を知らせる
くまが歩くルートを推測まったく別なくまが入り込んでいるかも
くま出没のニュースが連日のように報道されている。いわき市でもホームページに「クマ目撃マップ」を載せて、注意を喚起している。13年前から湯ノ岳でくまの痕跡を記録している三浦芳治さんは、この状況をどう考えているのだろうか。話を聞いた。
いわきFCを追いかけて 島貫真
歌声がまちをひとつにする
――ユアスタ最終節が教えてくれたもの
いわきFCは発足10年目、J23年目。今期は9試合価値がなく再開に沈んだが、そこから巻き返して昨年同様9位になった。熱戦となった最終戦のベガルタ仙台との試合を振り返りながら、いわきFCの「これから」について語る。

| 連載 |
阿武隈山地の絶滅危惧種 ㉒ 湯澤陽一
スギラン シダ類 絶滅危惧1A類
木漏れ日随想(54)佐藤 晟雄
わが心の友
DAY AFTER TOMORROW(274) 日比野 克彦
トレーラーハウスの活用
サッカーを応援するプロジェクトを開発する
| コラム |
ストリートオルガン(206) 大越 章子
舘野泉さんと賢治
天空、銀河へと誘われ
無重力に身をゆだねる
