何回通ったことだろう。昨夏、水戸芸術館現代美術センターで開かれた日比野克彦の個展「HIBINO EXPO 2005 日比野克彦の一人万博」。
いわきから水戸まで常磐道を使って、1時間強。展覧会の本質、いや日比野克彦というアーティストのいま、を知りたくて密着取材を続けた。その場に、遠慮がちに、それでいて自然にいたのが、この本の写真を担当した竹内裕二さんだった。しかも、時を重ねるごとに竹内さんと日比野さんを含めたスタッフたちの距離は見事に、しかも静かに縮まり、最後のころには、そこにいるのが当然、のようなポジションを確保していた。彼はカメラマンとして、実に良い資質を持っている人なんだな、とうらやましく思ったものだ。
『Yesterday Today Tomorrow』。これが、この本のタイトルだが、当然のように、展覧会に関する日比野さんの日々が「昨日・今日・明日」と連なりながら、映し出されている。その、意味がなさそうでゆっくりと意味を持っている日常が、じわっと見る側に迫り、この仕事は将来、大きな意味を持つことになるだろう、と思う。そして、それを日比野さんも認識しているんだろう、と思ったりもする。
展覧会の仕掛け人ともいえる森司さん(水戸芸術館現代美術センター主任学芸員)は本の最後に「連続する日常の中に、何かを見つけ出す意識が、とても豊かな日常を呼び寄せてくれること、本書を通して体感してもらえたら」と書いている。そして思う。日比野さんは、いつもおもしろがれることを探しているんだな、と。この写真集は、ヒビノの近くで空気になれた竹内さんが、生のヒビノを知らせることができた、愛すべきドキュメンタリーといえる。そして、なぜか温かい。
発行はリトルモア(03-3401-1042)。定価4,000円+税。
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