480号 2023年2月28日 |
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1羽の白鳥のはなし
2月中旬の午後、いわきの海岸線歩きの続きで、小名浜の工場地帯から小浜海岸にかけてカメラを持って歩いた。いわきサンマリーナの桟橋へ向かう前に砂浜に出てみると、1羽の白鳥が海にたたずんでいた。「海に白鳥?」と目を疑い、近づいてみたが白鳥にしか見えない。白鳥は警戒する様子もなく、逆に「待っていました」とばかりに波打ち際まで寄って、フレンドリーにスタスタ歩いてきた。
たぶん食べものをもらえると思ったのだろう。大久川河口で白鳥の群れを見つけ、橋からカメラを向けた時も白鳥たちは近づいてきて、もらえる気配がないと察知するとまた元の場所に戻って行った。サンマリーナの白鳥に「どうしたの?」と尋ねてみたが、白鳥はきょとんとして別な方向に行ってしまった。
桟橋を歩きながらも白鳥の姿を気にしていると、それからも砂浜を歩く人たちに次々近づき、やがて食事にありついた。どうも日常的に白鳥に食べものを与えている人がいるようで、白鳥はいつもの場所に移動して受け取った。その1羽と1人の姿は桟橋からシルエットになっていた。
4日後の昼前、いわきサンマリーナの砂浜を再び訪ねた。首を折りたたんで寝ている白鳥が海面にいた。散歩に毎日来ている男性によると、白鳥は1カ月ほど前からいるという。サンマリーナには昨年は飛来しなかったが、1昨年も3羽の白鳥がいた。白鳥たちは沼部付近の鮫川とサンマリーナを行き来しているらしい。
白鳥は湖や川、沼などで過ごすイメージがあり「海水で大丈夫なのか」と思うが、青森県出身のその男性は「白鳥は陸奥湾などにも飛来し、海を泳いでいる」と教えてくれた。男性は毎日、パンを持参していて、ストックで桟橋を叩くと白鳥が飛んでくる。
どうして1羽でいるのか、その理由はわらない。羽を傷めて高く飛べないのか、スナフキンのように自由と孤独を愛するのか、マリーナの居心地がいいからなのか…。頭を持ちあげて食べられる場合は自力でも生活できるので、そっと見守るのがいいという。もう少しすると、帰り支度を始めるかもしれない
特集 いわきの海岸線を歩く 4 |
「いわきの海岸線を歩く」の第4弾は泉町下川、小浜、岩間、佐糠地区まで。この周辺は常磐共同火力発電所の恩恵を受けながら、独自の文化を残している。とはいえ、震災で津浪被害に遭い、多くの人が地区を離れた。さまざまな人から話を聞いた。
泉町下川 いわきサンマリーナ周辺
大畑公園の近くで農作業をしていた男性のはなし
マリーナで弁当を食べていた男性のはなし
いわきサンマリーナの桟橋を散歩する男性のはなし
小浜 集落のいま
採鮑組合長夫妻に小浜のいまと海洋放出問題を語ってもらった。
生まれ育ち、暮らす72歳の女性のはなし
岩間 住宅地
サーフィンスクール・ショップの男性のはなし
宿泊交流施設のオーナーのはなし
佐糠 火力前の防波堤
仲間の釣りを眺めていた男性のはなし
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記事 |
小説家 松村栄子さんのはなし 2. 内閣総理大臣賞
遠藤拓二さんが『いわき発「安寿と厨子王」真実の物語』を出版
いわき市金山町在住の遠藤拓二さん(84)が『いわき発「安寿と厨子王」真実の物語』を出版した。20年かけて安寿と厨子王物語ゆかりの地をめぐり、一冊の本にまとめた。この本は金山地区と安寿と厨子王の縁をつなぐ集大成ともいえ、貴重な資料でもある。
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日々の本棚 『映画の木洩れ日』 川本三郎著
ギャラリー見てある記
野島美穂絵画展「ミミヲスマス」
連載 |
戸惑いと嘘(94) 内山田 康
康無知の発展について②
阿武隈山地の万葉植物 湯澤 陽一
(75)ヒシ
パンドーラーの箱(11) 福島の海から考える 天野 光
放射性ヨウ素129の海洋放出の海洋放出
コラム |
ストリートオルガン(179) 大越 章子
おてがみ
美しい読みものにふれることは何よりです