第481号

481号
2023年3月15日
久之浜海岸そばで見た飛行機雲 2023.3.11

 

12年という歳月はこころにずっしり3月11日を感じさせる

     今朝、つけたままだったラジオから流れる合唱で目が覚めた。作詞が竹内まりやさん、作曲が村松崇継さんの「いのちの歌」。NHKの連続テレビ小説「だんだん」のなかで歌われ、その後、小中学校の卒業式などでも歌われている。その合唱が終わるとラジオは「きようは何の日」のコーナーに移り「きょう3月11日は、東日本大震災が起きた日です。あれから12年になります」と、アナウンサーは言った。
 2011年もうさぎ年だった。うさぎ年からうさぎ年へ、丸12年が過ぎる。震災が起きてから毎年、3月11日は海へ行っている。今年は、新年から南に向かっていわきの60㎞の海岸線を取材して歩き、3月7日にゴールの勿来漁港にたどり着いたので、11日は再びスタートの久之浜に出かけた。
 春らしい暖かな日で、土曜日でもあり、久之浜海岸にはいつもより多くの人の姿があった。海を眺めながら賑やかにおしゃべりする女性たち、赤ちゃんを連れて防波堤を散歩する家族、自転車で走り抜ける男性たち…。ふと空を見ると、雲一つない青空にひとすじのひこうき雲がどんどん伸びていて、思わずカメラを構えた。シャッターボタンを押すと、鳥がいい声で鳴き出した。
 さらに、ほんとうのスタート地点の末続に向かい、防波堤から海を眺めた。楽しそうに磯遊びをしている五人家族がいて、なんだかうれしくなって、家族のうしろ姿をカメラに収めた。空にはさっきとは別のひこうき雲が描かれ始めていて、こころのなかでユーミンの「ひこうき雲」を口ずさんだ。

白い坂道が空まで続いていた
ゆらゆらかげろうが あの子を包む
誰も気づかず ただひとり
あの子は昇っていく
何もおそれない そして舞い上がる
空に憧れて
空をかけてゆく
あの子の命は ひこうき雲

 12年という歳月はなぜか10年より特別な気がして、こころにずっしり3月11日を感じる。


 特集 いわきの海岸線を歩く

 

いわきの海岸線60㎞を歩いて、さまざまな人たちから話を聞くこの特集も最終回。鮫川を渡って錦町須賀、勿来町関田、勿来町九面と歩き、県境が近い勿来漁港がゴールになった。

錦町須賀 海への思い
堤防近くで暮らす兄妹のはなし
自転車で海を見に来た男性のはなし
松林を歩いていた男性のはなし

勿来町関田 12年前のこと
畑のおばあさんのはなし
勿来海岸近くで民宿をしている女性のはなし

勿来町九面 勿来海岸
釣り人のはなし
帰り支度をしている釣り人のはなし
サーフィンをしに来た男性のはなし

勿来漁港
網を修理していた男性のはなし
漁の準備をしていた男性のはなし
6号国道沿いに住んでいる男性のはなし

 



 記事

小説家 松村栄子さんのはなし
3『僕はかぐや姫』
             


日々の本棚
『イスラエル 人類史上最もやっかいな問題』 
ダニエル・ソカッチ著




 連載

DAY AFTER TOMORROW(241) 日比野 克彦
引っ越し
「ヒビノスペシャル」と「日々の明々後日」

 

戸惑いと嘘(95) 内山田 康
無知の発展について③


阿武隈山地の万葉植物 湯澤 陽一
(76)カラタチ


 コラム

月刊Chronicle 安竜 昌弘

吉原公一郎さん
弱者たちとともにペン一本で
政治権力や体制に食い下がり続けた