第531号

531号
2025年4月15日
画・黒田 征太郎

                          浮かれてはいけない

 小名浜地区トークシェアミーティングに顔を出している。いわき市はいま、各地区にある老朽施設の集約化を進めていて、湯本駅前再整備が物議を醸している。その反省からだろうか。「小名浜地区の未来を『わたし』目線で考える」をテーマにそれぞれが考えを述べ、みんなで思いを共有していく。でも、回を重ねても方向性が定まらず、深まらない。心の中で首をかしげながら「ひょっとしてこれは、こういうかたちでみなさんの意見を聞きました、というアリバイづくりかもしれない」と疑ってみたりもする。
 そんなとき、サッカーJ2のいわきFCの拠点となる新スタジアムを小名浜の県有地に造る、という発表があった。その席で大倉智代表は「内田広之市長からまちづくりのパートナーと言ってもらった。主語は地域。このスタジアムをサッカーだけでなく、日常的に来ることができるコミュニティエリアにしたい。そのためのビルディング棟(5階建て)を造る」と説明した。その瞬間、頭の中でサッカースタジアムと小名浜地区の公共施設再整備がつながった。
 大倉さんの発言と新サッカースタジアムのイメージを重ね合わせてみる。「日常的に来るエリア」「学べる場所」「図書館とカフェ」「防災」。当然ながら、夢と現実がクロスする。いわき駅前のラトブ、並木の杜の商業棟、いわきFCパーク…。花火が打ち上げられたときはわくわくさせられるのだが、期待が徐々にしぼんでいく。そして結局は空いているスペースに公共施設が入ることになる。「あの5階建てビルというのが嫌ですね。何か裏がありそうで」という声を少なからず聞いた。そこには「税金を投入しやすくするために公共施設が隠れ蓑になるのでは」という危惧がある。
 記者会見である記者が「もしJ3に落ちるようなことになったらこの計画はどうなるんですか」と切り込んだ。確かに今シーズンのいわきFCはなかなか勝てない。しかも、それを笑い飛ばせない重いムードが漂っている。スタジアムについても歯に衣着せず意見を交わすことができにくい。これでは建設的な意見など出るわけがない。
 あくまで仮定の話なのだが、もしスタジアムのビルディング棟に公共施設を持って行くことになれば、小名浜のまちは完全に死んでしまう。しかもビルのなかに公共施設を入れる手法はとっくに破綻している。だれのものでもない。自分たちのまちなのだ。市民の税金を使う施設の再整備については市民自らが目を光らせ、順序を立てて真剣に議論していかなければならない。スタジアム建設と公共施設の再整備。動向に目を凝らし、市民として冷静に見ていく必要がある。浮かれてはいけない。


 特集 鯨岡家のこと

湯本町歩きの5回目は古くから湯本で中心的な役割を担ってきた鯨岡家にスポットを当てた。『私版いわき郷土史 鯨岡家記録一族興亡の系譜 上巻』(鯨岡昭著)をもとに鯨岡家の成り立ちや鯨岡家・新瀧の娘として生まれ、中央で活躍した鯨岡阿美子さんの人生などを紹介する。

鯨岡本家の子孫がまとめた歴史本に誘われて
中屋と新瀧としてまちに貢献

鯨岡阿美子のこと
ジャーナリズム、ファッション界で活躍した阿美子65年の生涯。
ジャーナリストの目を持ち続ける
新しい発想を持つ大切さ
人を育て、女性の活動の場を広げる

琉球料理「美榮」のこと
保好さんの妹の登美さんが創業

野球好きの父・久一郎
土地を提供して球場を造る

著書『アミコの目』

鯨岡阿美子さん

 記事

いわきFCスタジアムのこと
まちの構造を変える手助けをする
サッカーのいわきFCを運営するいわきスポーツクラブが3月28日、新ホームスタジアムの予定地を小名浜港の県有地にすると発表した。まだ概要とは言え、計画の中にはビルディング棟も含まれていて、その中に何が入るのかが注目される。テナント誘致が難しいだけに公共施設では、という声もある。大倉智代表の発言や質疑をまとめた。

わたしの本棚
『詩の中にめざめる日本』真壁仁著 岩波新書

シネマ帖
地方記者
いつまでも残るロケの思い出

いわきスポーツクラブ提供
 連載

92歳 要介護5
認知症の母を介護して思うこと ⑦ 松山良子
介護しているご家族へ 

楽しく、今以上悪くならないような介護を


阿武隈山地の絶滅危惧種 ⑧ 湯澤陽一
ヒメタチヒラゴケ 蘚類 絶滅危惧Ⅰ類


木漏れ日随想(40)佐藤 晟雄
必要なイニシャル語辞典



DAY AFTER TOMORROW(266) 日比野 克彦
入学式
奏楽堂がみんなの形で埋め尽くされた

 コラム

ストリートオルガン(200 大越 章子

「やさしく歌って」
あのころを思い出すお気に入りの一曲