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世界最高峰のバレエダンサー、シルヴィ・ギエムのステージ「THE
TOKYO BALLET JAPAN TOUR 2011 HOPE JAPAN TOUR」が11月1日、いわきアリオス中劇場で開かれました。
東日本大震災、原発事故などの影響で、世界各国の一流処の芸術文化の団体や個人の来日がキャンセルされる中、ギエムさんはキャンセルせず、周囲の反対を押し切ってまでも来日してくれました。自分が踊ることで、長い間支えてくれた日本の人々へお返しがしたいという、ギエムさんの強い意思があったようです。
公演はギエムさんとチャイコフスキー記念東京バレエ団の団員のみなさんによるものでした。
私がギエムさんを初めて見たのは1981年。パリ・オペラ座バレエ学校の日本公演で、ギエムさんは2羽の鳩という作品で主役を演じていました。まだあどけない表情の残る、緊張した趣のギエムさんでしたが、その柔軟さとしなやかな動き、そして爪先の素晴らしさが深く印象に残り、ほかのバレリーナたちとはまったく違うオーラを感じていました。
その後、1985年から東京バレエ団の公演に招かれ、白鳥の湖やベジャール振り付けの作品など、数多く目にすることとなりました。
日本中にも熱烈なファンを数多く持つギエムさん。今回の公演では日本各地をツアーで回っていましたが、被災地でぜひ踊りたいというギエムさんの意思でアリオスが候補にあがり、ごく短い間に検討を重ねた結果
、実行委員会形式で公演開催を踏み切ることになりました。
かなり短い期間での準備でしたので、実行委員会としても困難を極めました。100年に1人と言われるバレリーナ、シルヴィ・ギエム。そんな世界的に有名なバレリーナがいわきに来てくださる。ギエムさんの気持ちを地元の人々や子供たちに伝えたい! ギエムさんの素晴らしいステージを観てもらって何かを感じ取ってもらえたら、という祈りで一杯でした。
演目は4作品。東京バレエ団の吉岡美佳さん、高橋竜太さんのチェロのための5つのプレリュード。上野水香さん、高岸直樹さんの詩人の恋。東京バレエ団のトップスターたちによるコミカルで可愛らしい、美しい素晴らしい作品でした。
ギエムさんのルナ。それはまるで漆黒の闇に浮かぶ一筋の光。いや、ギエムさん自体が光そのものでした。静寂、妖艶、柔軟すぎるほど柔軟な体の中に見える真っ直ぐなライン。それは、月の女神以外の何ものでもありませんでした。
そして数年前から封印したボレロ。
真っ暗なステージ。ギエムさんのしなやかな手にライトが当たった瞬間、会場の観客は食い入るようにその指先に引き付けられました。一つ一つの動きが増していく度にそれは次第にエネルギーとなり、私たちにも会場の隅々まで伝わってきました。まさにそれはギエムさんのパワーでした。
さらにそれを取り巻く男性ダンサーが、ギエムさんのメロディーに引き寄せられるかのように奏でるパワフルな動き。失意の底にあった私たちの魂を呼び起こしてくれ、希望や勇気や優しさを与えてくれたギエムさんと東京バレエ団のボレロ。圧巻でした。
観客は総立ち。10分近くにわたるスタンディングオーベーション。このツアーのために封印を解き、踊ってくれたボレロの意味。これがすべてを物語っていました。
終演後、会場を出る人々の表情にもそれは十分に感じ取ることができました。笑顔で素晴らしかった!
と興奮する人、感無量で涙する人。ギエムさんが私たちにくれたエールは確実に観客のみなさんに伝わっていました。
まだ原発事故の影響で不安定な状況下、このいわきに来てくださり、このように素晴らしいステージを見せていただいた事に、そしてシルヴィ・ギエムさんの偉大さに心から敬意を表します。
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