439号 2021年6月15日 |

ちるちるおちるまひおちるまひおちる
6月になって、新型コロナウイルスの感染拡大防止のために休館していた、いわき市の公共施設が開館し、また少し日常が戻ってきた。気になっていた草野心平のオノマトペをテーマにした企画展を見たくて、心平記念文学館に出かけた。
オノマトペとは、ざあざあ、わんわんなど、ものの音や声などをまねた擬音語と、きらきら、にこにこなど状態を表した擬態語をさす言葉で、心平はオノマトペを多用する詩人の1人に挙げられている。心平自身はオノマトペを「擬音」と言い、意識して使ったのではなく、できあがったらそう表現していたに過ぎなかったようだが、擬音は心平の詩を広く深く、立ち上がらせる。
るるり りりり(「おれも眠らう」)、るるるるるるるるるるるるるるるるるるるる(「生殖 Ⅰ」)、ぎゃわろっぎやわろっぎやわろろろろりっ(「誕生祭」)。「第八月満月の夜の満潮時の歓喜の歌」は目にしただけで大合唱が聞こえてくる。
ぐりりににぐりりににぐりりにに
るるるるるるるるるるるるるるる
ぎやッぎやッぎやッぎやッぎやッ
ぎやるるろぎやるるろぎやるるろ
げぶららららららげぶららららら
りりりりりりりりりりりりりりり
ぎやッぎやッぎやッぎやッぎやッ
んんんげげげんんんげげげんんん
ごりらごりらごりらごりらごりら
ぐりけっぷぐりけっぷぐりけっぷ
わひわひわひわひどどどわひわひ
げぶららららららげぶららららら
ぐりっくぐりっくいいいいいいい
がりぎりがりぎりわひわひわひ
かえるの詩だけではない。轟轟轟轟(「日食」)や、づづづづ わーる づづづん づわーる ぐんうん うわーる(「夜の海」)、わんわんわんわん がわんわんわん ごんごんごんごん ごごんごんごん ううんうんううんうん うんうんうんうん(「阿蘇山」)、玄玄(「玄玄天」)などもあって、いとも簡単にはるか時空を越えてしまう。
「擬音は音の模写でも再現でもない。音を持たない対象からも擬音が生まれる程、それは心象の音性的表現なのである。そしてそれが的確に定着された時、擬音は永く生きてゆく可能性を持つ」と、心平は「生きてゆく擬音」で書いている。心平の擬音は真実が音に化けて表現されていて、音だけでなく風情や思想も含包するという。だからこそ心平ならではの独創的な表現がされ、辞書にも載っていない。
展示室に「滝桜」という詩が紹介されていた。
そよ風にのり。
はながちる。
はながちる。
ちるちるおちるまひおちるまひおちる。
(以下省略)
これから、さくらの花びらが舞う季節にはきっと、ちるちるおちるまひおちるまひおちる、と口ずさむだろう。
特集 コロナ禍でもできること |
コロナ禍のなかで、どう生きていくのか―。ワクチンの接種が始まったとはいえ先が見えないなかで、きちんと向き合って対策をとりながら、できることをしている人たちもいる。さまざまな立場の人たちに話を聞き、コロナ禍でどう生きていくのかのヒントをもらった。
ラヂオドールの時間
亡くなった人たちとの思い出と対話をする

吉武 利文さん
香りと疫病
微魔女企画「おかえり」の再演
3人の姿を見つめながら自分を思う

オノマトペのはなし
死んでる擬音
生きてる擬音
永く生きてゆくだろう擬音

家で飲む
ゆったりとした時間のなかで食にこだわる

木々とともに
湯ノ岳の自然に包まれクラシックを聴く

「夜カフェ」のはなし
真っ暗な夜のまちに灯りをともしたい

記事 |
「野口雨情~童謡詩人といわき」展
「野口雨情~童謡詩人といわき」が7月4日まで、いわき市勿来関文学歴史館で開かれている。展示をもとに北茨城市磯原町出身の雨情といわき(湯本温泉など)との関わりを中心に紹介する。

海洋放出をどう思いますか ③
佐藤 孝久さん

投稿 元茨城県瓜連町長 先﨑 千尋さん
「双葉町長伊澤志朗さんのはなし」を読んで
伊澤町長、町の外の人のことも考えてください
熱帯魚のはなし ペットフィッシュショップすがの
小さい水槽だと失敗しやすい

日々の本棚
『放射能の人類学 ムナナのウラン鉱山を歩く』
内山田 康
青土社・2200円

連載 |
連載再開
戸惑いと嘘(63) 内山田 康
太平洋(1)
阿武隈山地の万葉植物 湯澤 陽一
(36)アジサイ
ひとりぼっちのあいつ(17) 新妻 和之
先生、なぜ英語を勉強するの?
時空さんぽ 再び 〜磐城平城を訪ねて(5)
其の四 紺屋町
コラム |
ストリートオルガン(161) 大越 章子
新聞記事との再会
起きたことを報じるだけでない記者の視点