459号 2022年4月15日 |

NHKの「こころの時代」で3月中旬、「シリーズ私にとっての3.11『福島からの伝言』」と題して、楢葉町の宝鏡寺住職の早川篤雄さん(82)の伝言が紹介された。長年、原発の危険性を指摘してきた早川さんの思いを、半生をたどりながら伝えた。
1971年、福島第一原発が稼働し、楢葉町でも福島第二原発設置の動きが出始めた。稼働直後から大小さまざまなトラブルが起きていたなかでの新たな原発の設置の動きに、早川さんは疑問を持った。以来、訴訟の原告や原発問題の住民運動に加わり、原発の安全対策を訴えてきた。それが重大事故を回避する、唯一、自分たちができること、と考えたからだった。
番組のなかで、早川さんはかつて勤務した高校の同僚で、ともに原発裁判を闘ってきた、いわき市小川町の吉田信(まこと)さん(享年54)が生前に書いた2編の詩にふれた。1つは福島第二原発設置許可取消請求訴訟で、訴えを退ける判決が福島地裁で出されたその日に書いた「重い歳月」だった。詩は次のように始まる。
故郷の海岸線は原発の銀座になり
人々の素朴な暮しのありようも
人々の眼付きも
心なしか変ってしまった十年だった
私たちの一生も限りがあるから
誰にとっても十年は永かった
だが
慣れない金策に駆けまわり
署名を集め 勉強会もする
この十年がなかったら
私たちの人生はやせ細ったものになっただろう
そして詩は上記に続く。
この詩を書いた3年後、吉田さんは末期のがんが見つかり、その年の8月に亡くなった。「こころの時代」で紹介されたもう1つの詩は、遺作となった散文詩で、フランスのスーパーフェニックス高速増殖炉の事故の報道を聞いて書いた「核の冬に呑み込まれた春」だった。いま読むと、それは3.11を予言しているようにも思える。
特集 吉田信さんと原発の詩 |
吉田信さんの『二重風景』と『薄明地帯からのメッセージ』の2冊の著書と、仲間で出版にもかかわった早川篤雄さんと伊東達也さんの話から、吉田さんの人生や人柄を紹介するとともに、原発の詩の世界を巡る。

思いを見事に詩にしました

記事 |
小さな旅 道草をくいながら
茨城県大洗町を訪ねて
フェリーターミナルや水族館がある一方、昭和の雰囲気を残した商店会がある茨城県大洗町。春の潮風に誘われて、懐かしい匂いを持つ大洗を歩いた。

日々の本棚
『ひとりでがんばらない!』
著・藤田 孝典/絵・北村 人
クレヨンハウス 1650円
『下流老人』などの著書で知られる、社会福祉士の藤田孝典さんの初めての子どもの本で、「子どもと考える福祉のはなし」と副題がついている。

写真家 浅田政志のまなざし The look of Photographer Masashi Asada
『浅田家』の誕生
3.11でのボランティア
みんな家族

Photo:浅田政志
映画「浅田家!」のこと
演技陣が見せた自然さ
浅田家の家族を育んだ伊勢湾の穏やかな海景

浅田政志 だれかのベストアルバム
~5月8日 水戸芸術館
映画や写真集『浅田家』で知られる写真家・浅田政志さん(40)の個展が水戸芸術館美術ギャラリーで5月8日まで、行われている。家族をテーマに写真をみんなで記念写真を撮り、その体験、記憶を記念日にしてしまう浅田さん。その取り組みや思いを紹介している。

連載 |
連載再開
戸惑いと嘘(77) 内山田 康
神の死と主権の秘密(3)
阿武隈山地の万葉植物 湯澤 陽一
(56)コウゾ
ひとりぼっちのあいつ(36) 新妻 和之
「あしたのジョー」再起第二戦
時空さんぽ 再び 〜磐城平城を訪ねて(25)
其の二十三 水之手
DAY AFTER TOMORROW(230) 日比野 克彦
領土争い
世界の人々がみんなアーティストだったら
コラム |
ストリートオルガン(170) 大越 章子
マー姉ちゃんの母
明日のことを思い煩うなかれの呪文