先週の金曜日、詩人のアーサー・ビナードさんが編集室に来た。その日は午後から、ハワイアンズのラピータで開かれる医療者の全国大会で記念講演をするので、朝一番の特急に乗ってきて、その前に日々の新聞の報道姿勢などを取材した。 アーサーさんは文化放送で平日夕方の番組「午後の三枚おろし」を持っている。番組で日々の新聞を取りあげようとひらめき、ボイスレコーダーを持って、ひとりでやって来たのだった。着くやいなや、編集者から校正用紙がファックスで送られてきて、しばし集中して校正した。 一段落して、アーサーさんの取材が始まった。優秀なインタビュアーで、話題は多岐にわたった。質問を受けながら、あらためて「報道すること」を考えた。いつの間にか午後1時近くになっていて、車でハワイアンズまで送り、主催者にお願いして、いっしょに記念講演を聴かせてもらった。 演題は「フクシマが忘れ去られようとしていませんか?」。まず、五月に童心社から発売された紙芝居『ちっちゃいこえ』(脚本はアーサー・ビナード、絵は丸木俊・位 里の「原爆の図」より)を演じた。そのあと1時間半ほど、アーサーさんは熱弁をふるった。主催者が「もう時間です」と書いた紙を提示しても、急には止められなかった。 その記念講演から、NHKのラジオセンターのスタッフがアーサーさんの紙芝居を追い始めた。8月6日の広島原爆の日の夜に放送されるらしい。アーサーさんの紙芝居『ちっちゃいこえ』も、中村敦夫さんの朗読劇「線量 計が鳴る」と同様、「忘れてはいけない」「それぞれ考える」たねまきだと思う。