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 『Yomiuri Weekly』6月29日号の特集「全国化学汚染マップ」で、いわき市は砒素及びその無機化合物の大気への届け出排出量(PRTR法に基づく)が日本で一番多い自治体だった。その量は年間4605キログラム。横浜国立大学大学院環境情報研究院教授の浦野紘平さんたちは公表されたデータを基に、市町村レベルでのリスクの程度などをまとめた。それによるといわきの場合、数字的には許容濃度をかなり超えていて、風下の工場に近い住宅の大気などを調べてみる必要があるという。


 小名浜製錬所によると同社の銅製錬処理量は日本で4、5番目に多いという




 化学物質管理促進法(PRTR法)に基づき、一定の条件の工場と事業所は年間の化学物質排出量(大気、公共用水水域、土壌)と移動量(下水、廃棄物処理)を国に届け出ることが義務づけられた。初回(平成13年度)は対象23業種のうち従業員21人以上で、354の化学物質の年間取扱量が5トンを超える、全国約3万5000事業所から届け出があり、今春、データが公開された。
 浦野さんたちはそのデータを、10人のスタッフで1日12時間、3カ月ほどかけて整理し、これまでの研究成果を基に分析した。環境省と経済産業省では、届け出義務のない小規模事業所や少量取り扱い事業所、農業など非対象業種と家庭や自動車からの排出量を推計して都道府県別に集計しているが、浦野さんたちはさらに市町村単位でまとめた。

大きいリスクスコア

 浦野さんたちの分析によると、いわきの場合、人に対する大気への排出リスクスコアが最も大きい物質(農薬以外)は「砒素及びその無機化合物」だ。その排出量(届け出義務のない小規模事業所なども含む)は推計で4616.8キログラム。リスクスコア(いわきで住める面積の排出量×毒性の強さで算出)は約200万メートル/年。これは人が住める面積の200万メートル上空まで汚れていることを意味し、許容濃度をかなり超えているという。
 ただ、数値は現時点で得られるできるだけ妥当な情報に基づいて推計しているものの、さまざまな仮定や近似を基に推算されているため、あくまで有害物質の調査や削減策の参考にするための概略を示すものだという。

鉱石熔解で発生

 届け出されたデータを見ると、市内で大気中に砒素及びその無機化合物を最も多く排出しているのは、小名浜製錬所で年間4600キログラム。ほかに呉羽環境の環境処理センターが2.4キログラム、古河機械金属が2.1キログラム、東邦亜鉛小名浜製錬所が0.4キログラムとなっている。
 小名浜製錬所は銅製錬の処理量が日本で4、5番目に多く、砒素は原料となっている鉱石中に含まれていて、鉱石を熔解する際に発生する。産出国によっても異なるが、鉱石1トン中に砒素は数グラム〜数十グラム含まれている。小名浜製錬所では現在、月約4500トンの鉱石を1300度で熔解している。その作業は24時間、一年中行われている。
 大気中に排出する砒素とその化合物の濃度の測定や規制は法律では定められていないが、福島県では県条例で定め、平成9年度に小名浜製錬所の測定が行われた。その際、1立方メートル当たり1ミリグラムの規制値以下だったという。また、いわき市の環境測定調査でも、平成13年度に渡辺町の田部局で測定したが、南風が吹く夏でも全国平均以下で、市公害対策センターでは「今のところ問題はない」と説明する。

風下の影響は?

 浦野さんたちが今回、データを整理・分析したのは、PRTR法の本来の目的である、市民と行政と企業がデータを利用して化学物質の排出の現状や対策、内容、進み具合を話し合いながら、化学物質対策を進めてほしいからだ。そのためにデータを都道府県ではなく市町村レベルで示している。
 いわき市の大気の砒素及びその無機化合物の排出量について、浦野さんは「かなり好ましくない状態」と話す。まず、どこでどのぐらい出ているのか濃度を測定し、同時に風下の工場から近い住宅地の大気を調べてみる必要があるという。砒素の管理を事業所にしてもらい、必要であれば主要な工場の大気排出を改善、削減もしてもらわなければならない。
 いわきの風向きは冬に北風、夏に南風(夜になると北風)となる。小名浜臨海工業地帯で考えると、冬は煙突の煙は海側に、夏には陸側に流れる。煙突の長さ、地形、風向きなどによって、煙が最も流れてくる地域は異なる。「市町村レベルで調査、指導をしっかりやり、改善してほしい」と浦野さんは言う。データの整理・分析をしてみて、いわきを含め予想外の地点で予想外の化学物質が多く出ていると感じたという。

集塵機を増設

 小名浜製錬所では「総量で砒素及びその無機化合物が多く出ている市町村はみんな製錬所があるところ」と話す。現在、鉱石を熔解する反射炉の後ろについている電気集塵機を5基から6基に増設する工事をしている。また、市環境部では「平成9年度の調査で大気、水質とも基準は下回っており、市民の影響をきたす数値にも出ていない。市としては今のところ調査は考えていない」と、話している。



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