GIFアニメ 日々の新聞
CONTENTS
日々の新聞
風の通る家
いわきクロニクル
オンブズマン
編集後記
招待席

田人お伽草紙
草野天平の頁
HIBINO IN IWAKI
時のゆくえ
仲間たちの野辺送り
蔡國強といわきの物語
DUO
オリジナルショップ
定期購読
リンク集


  もの言わぬ道の小石も天地の
  成り立つ法を説くと聞け

 関内幸介さん(60)と石との出会いは、小川町塩田で過ごしていた小学生時代。山を駆け巡って水晶探しに熱中した。その周辺には「水晶ぼっち」と呼ばれる上下二段の水平坑道があり、水晶を見つけたときの喜びはなにものにも代え難かった。
 その後しばらく石からは離れていたが、大学を卒業してふるさとに戻り、消防職員になって復活する。きっかけは、やはり「石の原点」とも言える小川だった。小川分遣所勤務時代、山仕事をしていた母方の祖父と一緒に山を歩いた。そうした日々を通 して石好きの血が再び騒ぎ始めた。暇さえあれば祖父と山を巡り、鉱物を採集しながら祖父の話を聞いた。そうしたなかで南部松夫著『福島県鉱物誌』と出会い、いわき市域で産出される鉱物の調査研究を決意したのだった。
 フィールドワークを通して実感したのは、いわきは複雑な地質構成を持っている、ということだった。それだけに鉱物の種類が豊富で、単一市としては札幌に次ぐ、200種類もの鉱物が確認されている。その背景にあったのは、複雑な地質を構成する地質単位 が異なった性格を持っており、そのなかにさまざまな種類の金属鉱山が分布していることだった。
 動物、植物、鉱物の三大要素から成り立っている自然界。その最も地味な地殻を構成している鉱物に魅せられた関内さんは、市内を歩いて鉱物を採集し続け、ついに御斉所鉱山にぶつかり、そのとりこになった。
 御斎所のマンガン鉱山の調査をしていたとき、ズリから変なものが出てきた。スウェーデンの鉱山で見つかったロングバン石で、これが世界2番目の発見となった。その後、御斎所からは磐城鉱も見つかっている。国立科学博物館名誉研究員の加藤昭さんなどから指導を受けて次から次に鉱物を採集して標本にした。その数は2000点にも上り、5年前には『いわき市鉱物誌』をつくった。

 関内さんは、縁戚にあたる草野心平とも生前、交流があった。石の標本もプレゼントしたが、心平の石に対する思いは特別 だった。学問対象の鉱物としてではなく、石そのものにドラマ性を感じていた。関内さんの場合、どうしても石を構成している鉱物に目が行ってしまうのだが、心平はまったく違っていた。だから心平が持ち帰って置いてある石を見ても、魅力を感じるまではいかなかった。
 田んぼや畑に転がっている石を見つけると、ポケットに入れて持ち帰る。岩そのものが自然から屹立している二ツ箭山を愛し、詩にする。それが心平だった。
 これが宮沢賢治だと違う。「オホーツク挽歌」のなかで海の色を表現し「アズライトのところもある」としている。「アズライト」でピンと藍色が浮かんでくる。だから、賢治が鉱物に対していかに造詣が深かったかがわかるのだった。

 関内さんの最も好きな鉱物は、子どものころ探し歩いた透明水晶。明治時代は印材として採掘されていた。「結晶の中に自分が入ってしまいたくなるほど好き」だという。



日々の新聞風の通 る家いわきクロニクルオンブズマン情報
編集後記田人お伽草紙草野天平の頁日比野克彦のページ
フラガールオリジナルショップ定期購読リンク集


 
ホームへ
画面上へ