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 平四丁目の空き店舗を利用した、いわきTMO(いわき商工会議所)のチャレンジショップ「夢屋横丁」が期間を9カ月残して、3月で閉じた。まちの活性化を目指し、空き店舗の活用と新しい起業家を育成する事業だったが、場所、奥行きの広い建物、改装費の補助がないなどの理由で、出店者はあまりいなかった。現在、靴修理と合い鍵複製の「Mr.プレスト」と洋裁材料の「ミルママの店」がそのまま、独自に大家さんから借り、夢屋横丁の名前を残して営業を続けている。両店主とも20年以上、その商売に携わっているベテラン。そして、自分の店ならではの特徴にこだわっている。


 夢屋横丁は一昨年12月、起業家の活用と育成、中心市街地の活性化を目的にオープンした。家具店だった空き店舗を借りて小さく区切り、東京のアメ横や横浜の中華街のような面白く、オリジナルな店が並ぶ、小さな横丁をイメージした。家賃(水道・光熱費を含む)は2坪で月1万5000円、4坪で2万円。オープン時には子供服、めがね、豆腐、整体など8店舗が並んだ。
 しかし“文化祭の模擬店”のような雰囲気は魅力に欠け、場所や奥行きの広い建物構造、冷暖房がないことなど、やめて出て行く店はあっても、新しく入る店はなかなかなかった。そのため今年3月、2年間の予定を1年3カ月ほどで切り上げ、取り止めた。この間、合わせて12の店が出店し、その中でフィギュアを扱う店だけが独立して店を構えた。補助金を活用した空き店舗利用の実験でもあった事業だが、空き店舗をどうしたいのか、それをまちの活性化にどうつなげていくのか、コンセプトは見えなかったという。
 そのまま残ったMr.プレストは、夢屋横丁のオープン当初から出店している。店主の星成司さん(51)は大黒屋に入っていたテナントで、長年、靴修理と合い鍵複製の仕事をしてきた。当時のお客さんが今も訪れているほか、電話帳などでわざわざ探して来るお客さんもいる。ただ百貨店などにあるような、修理しても履き続けたい靴を置いている店が今、市内にあまりない。横丁を出るつもりで店舗を探しもしたが、予算に合う使えそうな物件はなく、そのまま留まっている。
 ミルママの店は昨年8月に出店。もともと、平の銀座通りで「マルシン」の名で商売をしていた。専門に洋裁をしている人たちに重宝がられた店だった。鹿島ショッピングセンター「エブリア」にも出店し、平と鹿島で洋裁材料を販売していたが、一昨年の4月に平の店を閉め、昨年3月にはエブリアからも撤退した。もう店を持つつもりはなかったが、お客さんに「ボタンは残っていないの」と請われ、夢屋横丁に店を出すことにした。ボタンも買えないまちに、 いわきをしたくなかった。
 お金はなく、ゼロからの再出発。品物も少なかった。それでも、ボタンは複数個入れたパックではなく1個売りし、和裁針やメリケン針、チロリアンテープ、レースなど、ほかの店にない、でも必要な商品を少しずつ増やしていった。その代わり、無理してブームのビーズを揃えたりはしない。それはほかの店で買える。店主の弓野栄子さん(52)は店にお客さんが来てくれる方法を常に考えているという。
 中心市街地と郊外の大型店では客層が違う。以前、平の銀座通りに来てくれていた車の運転ができない洋裁の専門家たちは、エブリアの店には姿を見せなかった。中心市街地の店は気取らず、人情と安心がある専門店だと、弓野さんは思う。品数は昔の10分の1ほどだが、必要性を感じていたお客さんが店に戻ってきている。茨城から来た通りかがりの人が「あら、ボタン」と、店に入ってくる。
 「商いというだけあって根気。いい商売をしようと思えば苦しい。でも目的を持ってやらないと」。弓野さんは話す。仕入れの支払いに頭を悩ますが、それでもこだわって頑張るという。「1人ぐらいバカがいてもいい」と。



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