今春から湯本高校野球部の監督に復帰した助川隆一郎さん(63)とは30年来のつきあいだ。選手たちに向ける温かく厳しい眼差しが印象的で、それは一貫している。チームが強かろうが弱かろうが、レギュラーだろうが、補欠だろうが、マネージャーだろうが関係ない。それは、高校野球を通
しての人間づくり、ということなのだろう。
ある高校に赴任したとき、グラウンドが荒れ放題で、新入部員は4人しかいなかった。うち2人は野球未経験者。練習をしても30分しか持たず、そのたびに2塁ベースに集まらせて「行くぞー」と連呼させた。なかには逃げ場として野球部に入ってくる子もいた。それを拒んだら行く場がなくなってしまう。グラウンドは、高校野球を通
しての教育の場になった。「それも高校野球だっぺ」。助川さんが、さらりと言った。5年後、その高校は準々決勝に進出し、甲子園に出場した聖光学院と2-4の接戦を演じるまでに成長したのだった。
湯本の選手たちを見て気づいたことがある。二年生レギュラーの背番号が大きいのだ。3番を打つ箱崎は「18」、キャッチャーの西田は「15」、二塁手の園部は「19」。試合終了後のインタビューで、ある記者が聞いた。「どうしてですか?」。すると助川さんがすまして答えた。「湯本高校野球部として年数を重ねている人が小さな背番号をもらうことになっている。それは、レギュラーとか補欠の問題ではない」
70人を数える部員たちがひとつの目標に向かって、自分ができることを考える。努力を重ねて、3年間の最後の年に自分の力を思う存分発揮できるようにする。監督はべたべたせず、リップサービスもせず、方向性を提示し、場面
場面で細かくアドバイスする。そして、観客の目を意識したこれ見よがしのプレーを嫌う。
県内最年長監督、助さんの高校野球がいい。
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