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2階の屋根裏部屋にある天体望遠鏡も、今年はまだ星を見ていない。
この巨体なる天体望遠鏡を、屋根裏部屋からヨイショ、ヨイショと肩にかつぎ一階まで持ってきて、そいつを庭に据えて天上の一点に焦点をあわせる。けっこうそれは過激な労働なのだが、少しまえまでは星を見るちからが庭まで運んでくれていたのだが、いまはちょっと辛い。
その代わりに、夜になるとレコードの溝のうえに針を落とす。星の代わりに見えてくる音楽。あれが星雲あれが彗星、あれが流星群。
そういえば、LPレコードって土星の環っかみたいだ。その環っかに包まれてぼくはゆったりと自転する。
あ〜いの、きずなを〜たしかめあう〜う、ふたりだけの〜お〜、このみじかいよる〜う、もえようよ〜、
南正人の『愛の絆』を聴きながら、何年かまえの、いやもっとまえの夜のことを思いだしていた。
南正人のLP盤「回帰線」。そのなかに収められている『愛の絆』、30年まえに白銀町ではじめて聴いてからいままでずっと、土星の環っかみたいに身体のまわりを廻っている音楽だ。
南正人が何年かまえ、いやもっとまえの夜に平の街にやってきた。
コンサートが開かれたのは2丁目の裏がわの2階にあった〈デュエ〉だったと思う。じつはこの階段からころげ落ち、1ヵ月ばかり入院したことがあったので、じつに慎重に階段を登っていったことを覚えている。
その夜、わが南正人はこの曲(愛の絆)を歌うのはいま、ちょっと恥ずかしいといいながら、少し恥ずかしそうに、あいのきずな〜お〜って、歌っていた。
さいごのリクエストのとき『わたしのブギ・ウギ』お願いしますとぼくは云った。
『わたしのブギ・ウギ』は南正人の作曲で、浅川マキが歌っていた。南正人の声で聴きたかったのだ。わたしの〜ブギウギ〜って、みんなで歌った。
それから、隠し持っていた「回帰線」のLPにサインをもらった。《愛の絆》と書いてあった。
今日あらためてレコード・ジャケットを見てみたら《愛の絆》のマジックの文字が滲んでいた。
そういえば、あの日は雨だったな。 |
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| (詩人) |
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