前回のハモとアナゴが反対であった例は他にもあるが、今回は同姓同名でも他人であるような魚の話をしよう。磐城弁でマツデイともマツダイとも呼ぶ魚がある。正しくはマトダイでマトダイ科の魚である。保育社の魚類図鑑によると「深さ六〜七〇メートルの深さに住む、一〇センチ以下の幼魚は円形、体側不規則形の縦走黒色帯が多数ある」とある。
この魚にちょっと似た魚にカガミダイがある。現代の磐城弁ではカガミデイと呼ばれている。昔の鏡のような色をしているために付けられたと思われるが、方言ではギンデイである。もちろん銀色に輝いているから名付けられた。マツデイとギンデイの大きな違いは、マツデイはワキビレの上から中央にかけて大きな斑点が見られるが、ギンデイにはその斑点がない。
もっとも魚をよく見ない、忙しい人は時々見間違い、マツデイもカガミデイである。この辺が浜っ子らしい。科学的には共にマトダイ科であるから仕方あるまい。
しかし、形が似ていても味は違う。魚肉(身)の部分が厚く美味なのがマツデイである。一方のギンデイは骨が多く、トゲっぽいのだ。味もよくない。人間の太った人と痩せた人の違いとよく似ている。
ところで磐城語では「タ」を「テ」と訛(なま)る場合と訛らない場合がある。タイ(鯛)は訛るが足八本のタコ(蛸)や空に揚げるタコ(凧)は訛らない。平はテイラ、太鼓はテイコと、割合訛る例が多いようだ。
魚類図鑑を見ていたら、目次にマツダイがあった。頁をめくってみたら、なんと磐城のマツダイ(マツデイ)とはまったく違う、似ても似つかない魚だった。別種のマツダイ科で黒褐色、日本ではきわめてまれ、とある。磐城のマツダイの色は銀、しかし正しくは黒褐色のマツダイである。ただし、私も見たことはない。
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(いわき市文化財保護審議会委員)
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