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10月30日午前9時半過ぎ、日比野克彦さんがワークショップ会場の生涯学習プラザの多目的室に現れた。朝5時半にセットした目覚まし時計を30分鳴らした後、がばっ?! と起きて、上野発午前7時発のスーピーひたちに乗ったという。市立美術館でのHIBINO展以来、ちょうど2年ぶりのいわきだ。
コンセプトチラシを作るワークショップ(いわきタウンアート実行委員会主催)。参加者たちも「チラシを作る」ことは、事前に知らされていた。だからマジックやサインペンや水彩
道具、クレヨン、色鉛筆、毛糸、色紙など思い思いの画材を持ってきた。でも“コンセプト”チラシって何だろう???
日比野さんは多目的室のホワイトボードに、その日の朝刊に入っていたチラシを並べた。大ホームラン大漁市や結婚式場の展示会、スーパーの日替わり特価品…。いろんなチラシがあるけれど、どれもこれも結局はお店の宣伝チラシ。コンセプトチラシはお店を宣伝するのではない。ある1つのコンセプトを設けて、商店街を歩きながらそのコンセプトに合った商品を見つけて、まとめるのだ。あくまで主役は商品。
そこで大事なのが、物を選ぶ視点、価値観、切り口。すなわちコンセプトだ。老若男女の参加者27人が3人1組になり、それぞれコンセプトを考えた。化石、ほしいもの、イタリア的なもの、珍しいものなど、グループから出てきたキーワードは、まだまだ“コンセプト”とは違う。
日比野さんは「お腹が空いたから何か食べたい、というとおのずと店は決まってくる。そうではなくて、どんなキーワードで商店街をぶらぶら歩くと、目的とは違う価値観が見えてくるか、ということ。例えば、ぴいひょろろの視点では、どんな風に見えるか」と、コンセプトを説明した。それを聞いて、各グループはさらに悩む。
それでも、いわきからイメージした“青い空”、元気な子ども、訳ありで売りたくないものと売れないものなど、グループのコンセプトが見えてきた。コンセプトが決まれば、探検隊になってまちを歩き、合った商品を見つける。一度も行ったことのない店にも入り、店の人に取材して、デジカメで商品の写
真も撮る。昼食も入れて、まち歩きは3時間。ためらい、それに慣れない取材に、だんだん足取りも重くなった。
まち歩きから戻ったら、見つけた商品をデジカメを見ながらどんどん絵にする。取材不足を感じれば、グループのだれかがもう一度、店に行ってみる。キャッチコピーも、レイアウトも考えてみる。チラシの完成目標時間は午後4時半。でも、とうてい無理な感じ。5時から多目的室はほかの団体が使うことになっていたため、急きょ4時半になったところで、上の階の和室に大移動をして、チラシ作りは急ピッチで進められた。
午後8時過ぎ。9グループすべてのチラシが完成した。グループごとに完成したチラシを発表した後、日比野さんは「店はものが売れればいいだけの場所ではなく、人が集まり、情報交換がされるところ。自分たちがほしい、買いたいという思いがあって、ものは生きる。ワークショップの本番は新聞に折り込まれた時。どんなリアクションが出てくるか」と、話した。
チラシは日比野さんが作ったものも含めて全部で10枚。11月23日から10日間、平のまちなか2000軒に配られた。初日、折り込まれたチラシの束をごそごそ探すと、トップバッターの日比野さんが作ったチラシが出てきた。コンセプトチラシのメッセージはまちの人々に何を伝えたのだろう? そして日比野さんの次の指令は何だろう。
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