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『100の指令』
 

 日比野さんは少年の心を持っている人だ。それはワークショップに参加するとすぐわかる。必ず、なぞなぞを出すからだ。今回のワークショップでも、色に対するイメージを質問していた。相手の感性を図るように。おちゃらけのようでおちゃらけではない。結構真剣にやりとりをする。先日も水戸芸術館で、手塚治虫の「W3」とジョージ秋山の「パットマンX」について、作品をつくる心という点で影響を受けた、と話していた。
 さて『100の指令』。この本は、ワークショップをする上でのきっかけというか、発想がぎっしりと詰まっている。自分をどう表現するのか、そのためのトレーニングが指令としてまとめられている。そして、今回の「コンセプトチラシをつくろう」のタネ言葉のようなものもある。例えば、「自分の描いた絵を街に貼ろう」「デパートの中で一番カッコイイものを探そう」「自分の看板を作って家の玄関に飾ろう」―などがそれ。さらに極めつけ、とも言えるのが「目と目の間にもうひとつ秘密の目があるのだけれど、その第3の目は自分では見れません。けどその第3の目でいろいろなものを見てみよう」。これが100番目の指令。
 日比野さんは本の裏カバーに最後のメッセージを書いている。
 「絵を描くということは、紙に絵の具で、絵を描くことだけじゃない。刺激を受けて、イメージを持つことが、絵を描くこと。イメージを持って、行動することも、絵を描くこと。行動しながら、ワクワクすることも、絵を描くこと。時間が経って、あの時のことを思い出すことも、絵を描くこと。だから、いつだって、誰だって、どこだって、絵は描けるんだ」


 
日比野さんのこと
 

 日比野さんは「ライブ感」や「即興性」という言葉を好んで使う。例えばワークショップをする。そこから何がこぼれ落ちるか、そこに今の自分が正直に出ているか、それが大事だ、と言う。そして「アートは職業ではない。コミュニケーション。だれかに自分の気持ちや感情を伝える方法」とも。日比野さんにインタビューした。

―これまでの人生で印象深い出来事は

 中学の卒業式を終えて教室に戻ってきた。すると突然、担任の先生が黒板に「二流」と書いた。そして「じゃぁ」と言った。今でも仲間たちと「あれは何だったんだろう」という話になる。自分は二流だと思っている。だって一流っていうのは一つのことを極める人のことでしょう


―芸術についての失敗は

 失敗はつきもの。それは次の課題になっていく。


―仕事はどうやって決める

 自分からは動かない。オーダーやリクエストがほとんど。過去のデータや実績で来る。でも正直言って、自分のコピーにはなりたくない。だから、自分をディレクションして、打ち合わせの中で相手を説得する。自分をどうドキドキさせるかが大事。


―食べ物は

 食べることにそれほど固執しない。好き嫌いもないけど、強いて上げれば肉より魚、ビールより焼酎。


―不安を感じた時は何を

 寝るかな。


―作品の意味はわかってもらわなくてはだめ?

 わかってもらえなくても自分の中になければだめ。


―魅力的な人間は

 わがままな人の方が魅力があるよね。それから、他の人の話も聞くけど自分の世界をきちんと持っている人。


―日比野さんにとってワークショップとは

 イメージから言うと新聞販売店のような感じ。そして、やるたびに宿題が出る。それをかたちにしていく。参加した人たちに見せる。その連続。体験したものをかたちにして見に来てもらう。ただ、それが地域とか社会の中で機能していかないと意味がない。


 

 


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