いわき市平上片寄在住の書家・石川進さん(63)の作品が5月28日まで、ベルギー・コクシッド市のテン・ボガード修道院付教会に展示されている。コクシッド市主催の「日本のたましい」展と題する展覧会への出展で、日本から6人の作家が参加した。さまざまな紆余曲折の末に念願が叶ったヨーロッパでの展示。石川さんはその意味を「煉瓦の中で育った伝統文化との対峙」とする一方で、「墨と紙と水の力はすごいものだな」と東洋文化の強靱さを再確認したという。今回の展覧会について聞いた。
石川さんにとって、今回の展覧会はすべてが初めてのことであるうえに、ハプニングの連続だった。それをカバーしてくれたのは、さまざまな人たちの情だったという。石川さんは「自分1人では何もできなかった」と、かかわり合ったさまざま人たちに感謝した。
当初は、在ベルギー日本国大使館で開催することで話が進んでいた。それは、墨や紙を材料に使う石川さんの作品は、ヨーロッパに飾ってみると、日本で飾るのとは違った反応や見え方がするのではないか、ということだった。話はトントン拍子にことが進むかに見えたが、なぜか立ち消えになった。石川さんは落胆したものの、「自分にとっていいものをつくり続ければいつかチャンスが来るはず」と思い直すことにした。それから3年後の昨年4月、画家で企画コーディネーターのヴァッカさんから、今回の展覧会についての誘いがあり、石川さんは参加の意向を示した。しかしその後半年以上にもわたって連絡が途絶え、やきもきが続いた。
あちこちのつてを使い、やっと連絡が取れて、正式に参加することが決まったのが11月の末。やっと胸のつかえが下りて準備を進め、2月下旬には作品の発送も終えた。出発は3月下旬。総勢14人で成田を発ち、ロンドンやパリを巡ったあと、会場となるテン・ボガード修道院付教会がある、ベルギー・コクシッド市へ入った。すると、ここでもハプニング。展示は自分の手でやらなければならないらしい。事実、同じ会場に展示されることになっているUCHIOさんは、仲間と展示作業をしていた。
会場の壁は煉瓦造りで3連はしごがあるだけ。天上からはワイヤーのようなものが下がっているが、それをどうするのか、思案に暮れた。石川さんの作品は畳1畳分もある大きさのものが20点以上ある。まずは作品の上部に棒状の板を付け、ブラインドのようにして上から下がっているワイヤーにくくりつけた。
石川さんの主題は一貫している。それは地球の成り立ちであり、生命体。幼いころから好きだった恐竜をはじめとするさまざまな生物の化石や拓本から発想した先カンブリアのイメージを墨と紙と水で表現する。混沌としたものをどう着地させるか、というのがポイントと言えた。
地球が経験してきたことを表現する、ということについては洋の東西はないが、画材や技法については違う。東洋を代表する墨と紙を使って描いた作品を西洋文化の象徴ともいえる煉瓦の壁に飾る、ということは西洋文化と対峙すること、と石川さんは思った。そして、その強靱さを再認識し、自分がこれから何をどうしていくかという確信を得たような気がする、と話す。
言葉、生活習慣、文化の違いを乗り越えてやっと実現した、今回の展示。企画者のヴァッカさんは、中国の故事をひきながら、長い年月の鍛錬と才能によって初めて可能になる作品を讃えた
|