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作家 広瀬隆さん

「原子力発電所のトラブル隠し」

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プロフィール
1943年東京生まれ。早稲田大学理工学部卒。著書は『東京に原発を!』『危険な話』など多数。現在、一番の関心事はイラク問題

 今度発覚した原発のトラブル隠しは80年代から始まっていた。東京電力だけではないが、当時「おかしいのではないか」と指摘する度に、我々を嘘つき呼ばわりしたことを思い出す。わかってはいたけれど、現場の人間が公然と嘘をついていた。結果として今、危ない状態にある。
 狂牛病(牛海綿状脳症)の問題が出た時、国は感染した肉を市場に一切出さない対策(全頭検査以前の牛肉は買い取るなど)をして信頼回復に努めた。しかし今回の原発の問題では、発覚後も危険な原子炉を動かし続けている。日本人は物事の危険性をわかっているのだろうか。事件そのものを何も理解していない。
 次々とひび割れが見つかって、報道は山のように出た。しかし単にトラブルを「隠していた」ばかりで、シュラウド(炉心隔壁)のひび割れが広がった時にどういうことが起きるのかなど、被害の恐怖を住民にわかるようにきちっと解説している報道はない。危険にさらされている一般 の人たちに、何を隠して何が起こるか、肝心なことが伝わっていない。それが最大の問題だと思う。
 シュラウドは炉心を冷やす冷却水の流れを調節して原子炉の出力(暴走)に直接関わるだけでなく、炉心の重要な構造物を支えている。大きな地震などによって小さなひび割れからシュラウドが破壊すれば、支えていたものも崩れ、燃料棒は溶融し、お釜の底に穴があくような最悪の事態となって、大爆発が起こる恐れがある。福島でチェルノブイリ規模の大爆発が起こった場合、地元には永久に住めなくなり、汚染は日本全土に広がる。
 また、当時の東電の責任者たちがその後それぞれどういう仕事をしているかという問題もある。原子力業務部長、福島第一原発副所長などをしていた人間が現在、青森県・六ヶ所村で使用済み核燃料の再処理を進める日本原燃の社長に就いている。定期検査で原子炉格納容器の気密性データを不正操作した人間が、10年後には平然と再処理工場のトップに立っているのだ。再処理工場の放出データは、まったく信用できない。
 私は1979年のスリーマイル島の事故で、原子力発電所の危うさをひしひしと感じた。しかし事故以降も、日本では原子炉が増え続けた。13カ月以内に1回の定期検査ではすべての部品を調べることはできず、「今回はここ」と決めて順繰りに行っている。度々ひびが見つかっている配管などはわずか10年に1回の割での検査だ。
 発覚したトラブル隠しの問題は氷山の一角で、ほかにも大量にある。日本人は本当のことを知らずに日常を過ごしている。だからこそ、原子力安全・保安院以外の独立組織をつくるべきだ。原発は自分たちの問題で、だれもがみんな被害者になる。




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