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 迦陵頻伽(かりょうびんが)。上半身が菩薩、下半身が鳥、両翼それに天衣をまとい、音を奏でる。いわき市平愛谷町の紋章上絵師で画家の石川貞治さん(54)はその迦陵頻伽を、改修していた常勝院=平中平窪=の客殿の天井画に描いた。仏画も天井画も、縦3.6メートル、横6.3メートルという大きさも、初めてのこと。依頼があって2年、制作に入って1年かかって完成した迦陵頻伽は天に舞い、美しい音楽を奏で、華をまき散らす。

 


 「天井画を描いてほしい」。常勝院の改修に伴って横山智俊住職から依頼されたのは1昨年1月だった。石川さんは絵の作例があまりない迦陵頻伽に興味を持ち、ラフスケッチ、さらに集められるだけ資料を集めて下図を描き、横山住職の了承を得た。
 古くは音楽の神とされ、好音鳥、妙音鳥と言われる。いい声、いい音楽で天国に来た人を迎える極楽浄土に住む鳥。初め、2体の迦陵頻伽が巴のようにぐるっと回転するイメージで下図をつくったが空間が出ず、中ぐらいの大きさの2体と小さなのを3体描き、4体に笛、琵琶、笙、太鼓を持たせ、残り1体は散華している。
 顔の表情や楽器を持つ手の形、笛を吹く口の形、琵琶の抱え方、羽根・・・。デッサンをたくさん描いて細部を詰め、小さな習作をつくって大まかな色を決めたが、例えば赤でもどんな赤を使ったらいいのか迷った。

 キャンバスは未知数の素材、ラオスヒノキ。30センチ幅の21枚の板の到着を待って、昨年2月から常勝院のそばの建物をアトリエに制作に取りかかった。色づきをよくするために、まずワイヤーブラシで表面 をたたいて細かい穴をあけて、それから、にかわで練った糊粉を塗って白い画面にした。
 原図をパソコンで取り込んでOHPのフィルムにし、画面には升目をつくって、その大きさに合わせてトレーシングペーパーに原寸で投影して転写。それを繰り返した後、墨でデッサンして彩色。テンペラの描き方としては古典的な方法をとった。テンペラ風の顔料と日本画の水干絵の具を使い、最初にバックを塗り、その後、迦陵頻伽に入った。
 その大きさから、例えばバックなどを塗ったり、長い線を引くのが大変だった。完成するのにどのぐらい時間がかかるかわからず、引き受けてよかったのか、と思った時期もあったが、制作は予定通 りに進んだ。仕事の合間を縫って1年がかりで取り組み、今年2月に完成した。

 制作している間、この道でいいのかどうかわからないまま何日か夜道を歩いている感覚があった。作品があまりに大きすぎて、描いたものの位置に目が置けず、全体像が見えていないかもしれない、と思ったという。本来なら50メートルぐらい離れたところから眺めてみなければならないが、いつも斜めから見ている感じがした。
 完成した迦陵頻伽は、石川さんならではの細やかさと独特の色彩で描かれ、透明感を醸し出している。3月中旬には客殿の天井に設置され、微笑みともなんとも言えない穏やかな表情が部屋をすっぽり包み、迦陵頻伽の世界がそこにある。そのうち、石川さんは1人畳に寝っ転がって、天井の自作と対話してみようと思っている。

 常勝院では現在、参道の工事なども行われていて、一般の人が迦陵頻伽を見られるのは6月から。いわきの寺にいわきの画家が描いた天井画。いわきの宝物が1つ増えた。





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