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5月1日(木)
メキシコ、ユカタン半島にあるウシュマルの遺跡に向う。開門は8時だが特別許可をもらって朝6時、真っ暗なうちから入れてもらった。入り口ゲートには誰もいないかと思いきや、ハンモックで2人が寝ながらの番をしていた。懐中電灯で許可書を確認して、いざ神殿へ。真っ暗で足元さえも怪しい。一人でしばし過ごす夜明けの時間は静寂そのものであった。暗いからこそ見えるものがあるとすれば今、見ておくしかない。見るためにはどうすればいいか?それは絵をかくことに限る!。準備をしているうちに、手元から先に目を移すと、どんどん神殿はその表情さえもあらわにしてしまっている。「そんなに己の姿を見せるのを急がないでくれ!」。刻々とあかるくなるこの時間帯はまさに誰かがこの世界を動かしていると実感させるには効果的な演出である。真っ暗な静寂の中にマヤの3人の神が天地人を創造したのは、西暦紀元前3114年8月13日であった。(ガテマラ高原のマヤ人キチェ族がポポル・ヴェの書に記している)
まさに太陽の動きを観察し、このうごきの仕組みを知ろう、把握しようという一念がマヤの数学を進化させたのである。なんてことを考えているうちに一枚絵を描いた。そして、いよいよ神殿に登る。45度以上ある急な階段である 眼下にUXMAL(ウシュマル)の世界が広がっている。「何が描けるのだろう?」。こんな特別な状況のときはいつもそう思う。なるだけ自分をからっぽにしないと、せっかくのものが入ってこない。夜明け前の神殿の頂上はマヤの人たちにとっては、世界を把握できた瞬間であったに違いない。 赤い線を一本描く、黒い線を一本描く。
これは、先日メキシコを旅行した際の日記の一部です。マヤの人たちが自分達の世界観を「記す」ために、神殿をつくり、文字をつくった。私はこれから何を「記し」ていくのだろうか?そんなことを帰ってきてから日記を読み返して今思っている。
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