12月22日の早朝、私は我が故郷・岐阜市長良川河畔にいました。毎年冬至の日に行なっている「こよみのよぶね」の準備のために30人ほどのメンバーが集まってきていました。今年で13回目となるこの行事は、1から12の大きな数字の行灯を川に浮かべて、川の流れを見つめつつ、今年1年を振り返り、来る年に想いを馳せるという風物詩です。メンバーたちが手に持っていることしのチラシには、こんなコピーが書かれています。
「こよみのよぶねはいつものように今年も流れると、当たり前のように思っていました」・・・
例年行っている当日の準備と段取りも、今年は全く異なっていました。昨年の夏7月7日に岐阜市を台風が直撃して、川の水位
が上がり、長良橋陸閘(りっ こう)が閉鎖されたのです。長良橋陸閘は1959年の伊勢湾台風の際にこの付近から水が溢流、氾濫したために1962年に設置され、水位
が19、74mを越えると完全閉鎖されます。設置以来閉鎖されたのは3回目でした。(1976年、2004年、2018年)。幸いに堤防が機能し大きな被害は免れることができました。
この日以外にも今年が大雨の日が多く、岐阜市を流れる長良川は5月11日から10月15日まで中秋の名月をのぞく毎晩、篝火で鮎を誘い漁をするという1300年の伝統漁の鵜飼いが行われていますが、全157日中過去最多の42日が運行中止となり、異常気象の影響を大きく受けた2018年でした。
台風シーズンも終え、川の流れはまた元に戻っていたように見えるのですが、見えない川底では大きな変化が起きていました。長良川はダムが1つもなく、上流の水量
は一気に下流に流れてきます。水量の多い時は大きな石をも運び、小さな石、砂利は流れとともに動いていきます。力が集中する地形の箇所では川底が大きく抉(えぐ)られていました。その改修のために河原にはショベルカーなどの重機、大型ダンプカーが出入りしています。
「こよみのよぶね」は例年だと鵜飼を観覧する観光客用の屋形船の屋根に数字行灯を取り付けて川を流れるのですが、今年はこの工事の影響で、屋形船が本流に出る水路が閉鎖されてしまい、使用できなくなってしまいました。それで船を使わずに河原に設営することになったのです。
12の数字のうち、3つの数字だけはフロートに設置し水面
を移動させましたが、9つの数字は川面を流れる事は出来ませんでした。動く数字、動かない数字があった2018年の「こよみのよぶね」。時間が止まることのないことを想う、冬至の夜となりました。
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