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 東京スカイツリーにのぼって来た。
 634mという高さは地上から見上げれば低くはない。高さとは周りとの比較で決まる。標高634mの大地に立っても高いとは感じない。周りがみな634mでは高さは0に等しい。だからスカイツリーは高く見える。これがビルだったらこれほどでもないだろう。底面 積が少ないのにヒョロリと天にまっすぐ伸びているから、比較対象物との差が大きいから、なおさら高く見える。
  子供のころ木に登った記憶はみなあるだろう。うまいこと足がかかるくぼみなり、枝を探して手を伸ばして木に登る。1mでも地上より離れればそこは世界が違う。日頃の目線とは変わって目の前が開けたような気分になる。自分より上にのぼっている年上の友達がいると、その子の見ている目線がうらやましくって、追いついてそこまで登っていこうとする。その子の見ている風景は今僕が見ている風景よりもっと凄いに違いない。
  この予測は疑いの余地はない。なんとか頑張ってその高さまで登ると、苦労して登っただけの甲斐はある。さっきまですごいと思っていた風景がまるで陳腐に見えてきてしまうのである。ということはもっと上に登れば、今感動しているこの風景が大したものでなくなってしまうということだ。つまりこれは切りがないお話なのだ。
  その切りのないお話の続きがスカイツリーに登ったお話となる。第一展望台350mを経由して第二展望台450mまで上がると、周りにはなにもない。羽田空港を飛び立った時に飛行機の窓から見ている風景であるが、不思議なことに風景が動かない。飛行機ではないから、これは建物の窓だから…。
  1分の1の東京のリアルな地図が目の前に現れている。完全なる俯瞰の位 置である。完全なる鳥瞰図である。グーグルマップでスケールアウトしていく時に途中で見る写 真である。しかしこれは今現実の風景である。マップではない。地上では何が起こっているのだろうか? そんな気分になる。つまりここと地上は別世界である。
  すべてのものが450m以上先にある。車が小さく真下で動いている。目線を450からどんどん先に延ばしていくと、動いているものが可視できなくなる。大概の動いているものは小さなものであるから、遠くからは判別 できない。すると、この今私が見ている東京の街がみな止まってしまっているのではないか、時間が止まっているのではないかという気分になった。
  1時間後地上に降りてきた、電車に乗りスカイツリーを見る。私はあのタワーから見た風景を記憶していた。そうして私はまた東京の地図の中を移動している、地上の時間は止まってはいない。 

(アーティスト)
※紙面に掲載される画像はモノクロになります。




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