アルゼンチンの首都ブエノスアイレス で来年、「BIENAL
SUR」というアートのプ ログラムが行われます。参加するのは、
コロンビア、キューバ、ペルー、チリ、 ボリビア、ブラジルなどラテンアメリカ
の国々です。
SURとはスペイン語で「南」の意味。 これまでのビエンナーレは、ベネチアビ
エンナーレ、シドニービエンナーレなど 都市の名前がついてきました。日本でも
トリエンナーレだと横浜トリエンナーレ、 愛知トリエンナーレなどが挙げられます
(ビンナーレは二年ごと、トリエンナーレ は三年ごとに開催の意)。しかし「BIENAL
SUR」は南のビエンナーレというざっく りとした方位
が示すように、国とか町を 横断していて、各地域の大学組織が中心
となって行っていく、全く新しいアート プログラムの運営を目指しています。そ
して、大きなテーマとして掲げ、模索し ながら取り組んでいこうとしているのが、
ソーシャルインクルージョン(社会的包 括)でのアートの展開です。
そんな「BIENAL SUR」に参加すること になり、11月中旬にブエノスアイレス
でのカンファレンスに出席してきました。 そこで発表したのが、この夏にブラジル
で展開した「TURN」というアートプ ログラム。これはマイノリティーの施設・
地域にアーティストが滞在する交流プロ グラムです。
サンパウロ市の4つの福祉施設に4人 のアーティストが2カ月間ほど滞在・交
流し、その成果をリオデジャネイロで発 表しました。このブラジルでの展開が起
点になり、来年はアルゼンチンで行うこ とになったのです。
ブエノスアイレスの福祉施設を6カ所視察し、「TURN
IN ARZENTIN」の準備が始 まりました。最初に訪ねた「Educational
Center for Children with Severe Emotional Disorders.」は4歳から18
歳の発達障害児が通う通所施設です。職 員75名、通
所者105名。ここの運営 方針は、障害特性で接するのではなく1
人1人の個性を見つめ、治療や投薬に依 存せず成長を促すというものです。
私が施設を訪ねると、すでに職員の方々 はTURNの活動を理解してくれていた
ようで、「早くここで展開してほしい」と 懇願されました。その歓迎ぶりに少し戸
惑いながらも、この活動に対する期待感 と社会における必要性を強く感じた瞬間
でした。TURNはメソッドが確立され たプログラムではないし、絶えず動かし
ていくものです。そこが福祉的な活動と は異なるアート的な特性なのでしょうか。
南へ、南へ、行ってきます。
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