サンパウロの四箇所の福祉施設にアーティストやワークショップファシリテーターが滞在して、利用者の人たちと制作を行うという活動の監修を今行っています。日系の高齢者施設である「憩いの園」には日系三世のナカオジュン氏、日系人が運営している知的障害者施設「こどもの園」には同じく日系三世のタチポロ氏、自閉症児療育施設「PTPA」には日本から五十嵐靖晃氏、そして「モンチアズール」という知的障害者や地域の子供達が通
う施設には、瀧口幸恵氏。
ナカオ氏は日系一世のブラジルに移民してきた高齢者の人たちの話を聞き、改めて自分のルーツである人たちの大変な苦労を慮(おもんぱか)り、一世の方々を抱きしめたノ、その抱きしめられた姿をブラジルの伝統工芸である籠の編み方(セスタリーア)を使って形にした。
タチポロ氏は日本の伝統工芸である江戸つまみの技法でブラジルの生地(シィタ)を使って、入所者の日常に寄り添いながら直径5cmから10cmほどの五枚の花弁からなる花を数多く制作した。
五十嵐氏は、薬に頼らずに治療するという日本人の方が考案した日常生活療法を推進している施設の利用者と共に、ランニングをすることから1日が始まり、その生活の中で、一緒に江戸組紐の技法を生かした糸の作品を制作した。その糸は東京にある福祉作業所「クラフト工房ら・マノ」で染められた木綿の糸も含まれており、国を超えて2つの施設が結ばれていく物語も同時に紐に組まれていった。
瀧口氏は東北沿岸部に伝わる1枚の和紙にお餅や、お神酒などの絵柄を切り絵で表現する「きりこ」を施設の利用者と共に作り、想いを伝えるいのりの形を日本と同じように、ブラジルのそよぐ風の中に飾っていった。
これらの活動は、8月18日から9月7日までリオデジャネイロのインぺリアルパッソで「TURN
IN RIO」というタイトルで展示されるとともに、引き続きワークショップを会場でも行い、来場者に施設の様子、利用者の言葉などを伝えていきます。日本に於いては、報告展を「TURN
IN BRAZIL」として10月21日から23日に東京六本木の国立新美術館で行う予定です。ブラジルからのお便りでした。
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