5月9日、東京は外堀通
りを御茶ノ水から四谷に向かって車を走らせていた。日本サッカー協会が入っているJFAハウスで、岡野俊一郎さんが館長を務めるサッカーミュージアムのアドバイザリーボード会議に出席した帰りである。日本サッカー協会が持っているお宝(トロフィー・ユニフォーム・交際交流の記念品・ワールドカップ関連品々)などをもっと世間に知ってもらって語ってもらおうという話をしながら、二宮清純さんのスポーツ最新情報なども聞きながらの会議であった。
会議の席にはフルーツロールケーキが出されてあった。最近人気のケーキである。会議中にどのタイミングでこれを食べるのかは大変難しい。会議が始まって5分経過。ふと気がつくと岡野さんの前にあったロールケーキがすでになくなっていた。お皿の上にはロールケーキに巻かれていたビニールだけが残っている。いつの間に!
さすが上野の和菓子屋の息子! 甘党! 以前、あれは2000年のシドニーオリンピックの時だった。岡野さんと飛行機の中で隣の席になり、アイスクリームをおいしそうに食べていた姿を思い出した。
そんなことを思い出して私は信号待ちをしていた。反対車線にバイク便が走ってきた。歩道には郵便ポストが立っている。「物流・輸送・移動・通
信・やりとり・お届け・交流・ホームアンドアウェー…」「そうだよなー」。最近は気がつくと、夏に行う金沢21世紀美術館での新作の作品のことを考えている。思いを作品制作に馳せるとき、その過程でさまざまなものを刺激して、いろんなことが頭をよぎる。それには時間軸的なものは存在しなく、脈絡もないし、予測も出来ない。
私はこの道は好きである。お堀があって黄色い総武線が走って、春には桜が咲いている。特に、四谷手前の左カーブが好きである。そんな居心地のいい場所にいるときは、ロールケーキとバイク便と赤い郵便ポストと作品制作が繋がってくるのである。行ったり来たりをテーマとする金沢での個展のタイトルである「ホーム→アンド←アウェー方式」のヒントがそこにはあったような気がする。あともうちょっと曲がりくねる遠心力が必要だ。
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