東京藝術大学の学園祭である「藝祭」が9月6日から8日に行われた。学内の屋外では飲食などの模擬店が賑わい、校舎の中では美術学部の学生の展示、音楽学部の学生の演奏会が教室などで行われる。藝大が立地する上野公園では学生が作ったアクセサリーや小作品などのマーケットが展開される。その中でも一番注目されるのが神輿である。学部1年生が夏休みをかけて制作する造形は素晴らしく、多くの放送メディアも取り上げるほどである。そして何よりも驚かされるのが、これらのすべての藝祭が学生主体で行われているということである。
藝術祭実行委員会は学生のみで構成されており、企画、運営、経理、広報を全て学生が行っている。そしてこの精度が年々上がっているのが、これまたすごい。今年で藝祭は72回目を迎えた。私が学生だった頃と運営の制度は変わってはいないが、今と昔を比べると、神輿の造形力、演出力、全体の運営能力、そして広報能力、安全管理能力など、雲泥の差がある。ネット環境などの様々なツールの進化もあるが、それに伴い人間の能力が上がっている、と言わざるを得ない。
初日の朝から来場者で学内は溢れ、最終日を待たずに様々な販売物は売り切れる。特にこの3、4年の注目度が高くなっている気がする。世間の芸術に対する期待度なのか、上野に対しての魅力なのか、インバウンドにつられて都会の中の異次元空間に足を運ぶ。日本の伝統の再認識とともに、次世代の若者文化も味わうことができる、などの様々な要因がそこにはあるような気がする。
学部の1年が神輿を作り、実行委員長は2年が担当し、展示は3年以上が中心にやっているという適材適所の構造も、長年続いているポイントであるかもしれない。しかし何よりも、大学が学生の自主性を重んじているという点が大切である。というより学生が「自分たちでやるから、好きにやらせてくれ!」というのが持続性の最も重要な点であろう。
私も藝祭の空気感に触れると、ついつい学生気分に戻ってしまう。そんな藝大であり続けられるのが、何よりの大学の伝統といえるのだろう。改めて藝祭を見て、藝大の芸術の全ては藝祭から生まれているような気さえして来たのかも・・・と思えるほど、若き人間の力がほとばしっていた藝祭であった。
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