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 先日あるお寺さんに行ってきました。このお堂が素晴らしかった。今までに見たこともない内部空間でした。私は3時間ほどそのお堂の中で、不思議な時間を過ごしました。
 何がそんなに引き付けるのかというと、阿弥陀如来が動くのである。雲に乗って西方の彼方からやってくるのである。何をばかなことをいっているのだ! と怒っているあなた、ほんとそうなんだから。
 しかし遊園地のアトラクションじゃないですよ、お寺です、電気仕掛けではございません。でも誰もが見えるというわけでもないし、お堂の中のどこでも見えるというわけでもないのです。まずは仏像の正面 に座ります。5センチでも左右にぶれてはいけません。そして仏さまのお顔をじーーーと見つめます。10秒…20秒…あっ! 瞬きはしてはいけません! するとどうでしょう。お堂の柱や梁が光背と重なってきて遠近感がなくなってくる視覚トリックに襲われてくるのです。万華鏡のように顔の周辺が動き始めるのです。そして光り輝く雲が現れてくるのです。
 頭がおかしくなったわけではないですよ。ではなぜこのように見えるのか解説いたしましょう。お堂の梁はシンメトリーに仏さまを中心に放射線状に出来ており、梁の下面 には白い線が装飾されているのです。これが空間すべてを光背にさせてしまうのです。そして視点を動かさないと遠近感が失われます。これは見るほうの工夫です。すると空間すべてが同一面 に見えてきて、万華鏡のようなモザイク状に見えてくるのです(空間は遠近感がなくなればモザイクになる)。そしてなぜ動くかはここからです。
 このお堂は西の壁だけに窓があり、夕暮れ時には西日が窓から入り、床に反射するのです。すると金箔の阿弥陀如来の肌の色は光が動くと共に変わっていくのです。お堂の中の色もあっという間に変わり、それを正面で見ていると、やがてお堂の空間をモザイクに変化させた万華鏡は動き出すのです。そして窓の光は如来の足元で輝き、雲に見えてくるのです。

 とても貴重な体験でした。そんなところがどこにあるのかは、言えません。「何事も縁」。
(アーティスト)




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