2月末に福岡港から尾道港まで、船で5泊6日の旅をした。電車で移動すれば2時間ほどの距離。船の名前は「tara」海洋探査船である。フランス籍の全長36m、幅10m、高さ18mのヨットである。2003年以降世界の海を航海しながら海水を採集し、調査している。40カ国の科学者が参加し、その科学的成果
は世界的科学雑誌「サイエンス」(2015年5月22日特別
号)にも掲載された。今回日本に初めて帰港し、海の環境問題の啓蒙活動にあたっている。
船員は6人だが、通常はこの他に7人の科学者と1人のアーティストが乗船する。科学的な視点での発信とアーティストの作品を通
しての発信も同等に捉えているところが、フランスらしい。今回のグアムから横浜までの航海に乗船しているアーティストは日本人の大小島真木さん。大小島さんは科学者の話を船内で聞いたり、実際の海洋調査を体験したり、なによりも船で大海原を航海し、その経験を基にして作品を制作する。横浜からはまた次のアーティストが乗り込んでくる。これらのアーティストは世界公募で選ばれている(今回の航海では約300人から6人が選出されたらしい)。
私もタラ号に乗船して何枚かのスケッチを描かせてもらった。途中、私の知り合いがいる瀬戸内の島にも2カ所ほど立ち寄った。クルーや科学者たちと島民との出会いもあり、摩訶不思議な貴重な時間を体験し、尾道に到着した。そこで出会ったのが、ほぼ10年ぶりの懐かしいエチエンヌさん。この「taraプロジェクト」の立案者である。
私が彼と初めて会ったのはもう30年も前になる。パリで初めて個展をした時、2人とも20代で、互いに夢を描き、それに向かって歩き始めた頃だった。エチエンヌは「世界の海の環境問題を船で航海しながら探求していきたい」と確かにあの頃言っていたノ。再開してこうして話していると、あの時と何も変わらないような気がした。そしてまた次の夢を語りだす2人だった。
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