8月6日から水戸芸術館で個展を開きます。その中で一般の方にも参加していただいて作品を制作する企画を今回ご紹介します。タイトルは「HANDS HABITS(ハンズハビッツ)」これは造語なのですが、手のくせを意味します。
各人が持っている手には癖があります。ここで言う癖とは筆跡などの個性が無意識のうちに思わず出てしまう癖のことを指します。このハンズハビッツを大集合させて作品を作っていこうということなのです。
17世紀にヨーロッパ英国にてマニュファクチャ(工場制手工業)なる産業革命がおこりました。これはのちに機械が人間に取って代わって現代の無人化工場の姿になっていくわけですが、ハンズハビッツが求める所は機械には到底、取って代われない部分の生産能力であります。「同じ行いを他人と同じようには行うことは不可能である。なぜならば自分の中でも同じことは二度と同じようには行えないのだから」
制作する作品数は7〜8点、それぞれが3立方メートルほどのサイズになる予定です。素材は紙、布、金属、木材などさまざまですがタイトルはすでに確定しています。つまり完成イメージはすでにしっかり決まっているわけです。
日比野が持っている色、形、素材感を日比野の指示の元に手を動かして行きます。例えば「紙を5センチ四方に切って、緑色を塗って、この場所に貼っていってください」、てな具合です。同じ指示が出ても100人寄れば、100通りの表情がその作業には出てくるはずです。
5センチの四角を切るときにどのようなパターンがあるか考えて見ましょう。
まずは定規を使う人、使わない人。カッターで切るときに定規をあてる人、そうでない人。はさみで切る人。下書きをして一気に切る人、一つずつ切る人、切るときに下書きの線の内側か外側か線上か?
力の入れ方も一回のカッターの動きで行う、慎重に徐々に切っていく。これらの組み合わせで、5センチの四角と言えどもすべてが異なった形になってくるのです。まして塗る行為、貼る行為などは切る以上に単純な行為だけに、個人の中でも安定しない作業になっていくことでしょう。
イメージとアクションで生成されていく作品は決して一人の個人の中だけで成就させなくてはならないことではありません。自分の能力はすでにすべての人が持ち得ていることに注目した制作システムということです。
4月からこの制作は開始します。日々の新聞の読者の方も「面白そうだな」と思ったらどんどん参加してみてください。
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