瀬戸内国際芸術祭・秋シーズンが10月5日から始まりました。私は「瀬戸内海底探査船美術館プロジェクト」で2つの作品を出品しました。
ひとつは「海底探査船美術館一昨日丸」。この船には、海底から遺物を引き上げる作業をするワークスペースと引き上げたものを見せる展示スペースがあり、期間中は桟橋に係留し、来場者が見学できるようになっています。開館記念企画として「瀬戸内のナウマン象の化石展」が開催されています。瀬戸内海がまだ海でなかった頃に、ナウマン象がここに生息していたのです。
もう1つは「ソコソコ想像所」で、150点余りの瀬戸内からの遺物が展示されています。多くは漁師さんたちの網に引っかかってきたものであり、たこつぼから戦争時代の薬莢、沈潜の破片、備前焼、などがあります。来場者はこれらの遺物を見て、スケッチしながら、このものがどのようにしてこの海の底に沈んでいたのか? を想像します。そこには次のメッセージが掲示されています。
「海の底には時間の記憶が遺物として眠っている。地上の時間は前に進むけれど、海底には時間が止まったモノたちがそこにいる。私たちは地上の生き物だから、海の中を容易に見ることは出来ない。空は遠くても見上げればいつも見えるけれど、海の中は5mの深さでも見えない。見えないから『無い』のではなく、見えないなら『想像』してみよう。海底からの記憶の展示物をもとに、過去の時間を想像してみよう。(中略)モノを見ていれば想像できる。海の底から来たものたちは、決して遠くのものではない。私たちの足元の地をたどっていけば海底に繋がっているのだから」
オープン初日の土曜日はあいにくの雨で444人、2日目の日曜日は1000人を超える来館者がありました。作品があるのは粟島(香川県三豊市)。近くの港(須田港)から船で15分かかります。連絡船には定員がありますが、会期中は臨時便も出るということ。多くの人に見てもらえればと思っています。
11月4日までで、3日は私も一昨日丸に行きます。この日は特別
に船が桟橋を離れて、木造船が沈んでいた海域まで行くというプログラムがあり、海底探査の臨場感を味わってもらいたいと考えています。粟島は、ちょっと遠いけど、想像してみれば、そこに行ける。
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(アーティスト) |
※紙面に掲載される画像はモノクロになります。 |
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