漁師が使っていた木造船は日本各地で様々な呼ばれ方をしている。北陸の富山県氷見市ではドブネと言い、全長15mほどの大きな船である。とれた魚を運んだり、定置網を運んだりする、海のコンテナのような役割をはたしていたという。これほどの大きな船を造船するには、それなりの大きな材木が必要になり、漁師たちはドブネを作るために何代もかけて木を育てたという。
氷見市ではヒミングという地元のアート活動をしているグループに呼ばれて、2006年から年に1回ワークショップを行っている。使われなくなった蔵を改装したスペースが活動拠点となっていて、目の前には川が流れている。今でも生活の足になっている船が時折行き来し、川辺にはサギが羽を休め、川岸には近所の誰かが獲ってきた魚が、開きになってかごに入って、風に当てて干してあったりという、のんびりしたところである。
そして今年もつい先日、氷見に行ってきた。今年のワークショップでは、ドブネを作ろうということになったのだが、15mはさすがに難しく、まずは模型からといういことで、5分の1ほどのサイズで挑戦した。
「森が海を育てる。漁師が木を育てる」。これが今年のテーマ。模型といえども、やはり木で作らねばドブネのメッセージも伝わらない。なおかつ、みんなでコツコツとできる手法を考えた。その名は「割り箸ドブネ」。割り箸工作です。角材などの切れ端から生産された割り箸を使って、大きな船を作ってみよう!
用意した割り箸は10000本。箸をつなげて板にして、ドブネの図面
に合わせて船底やら船まわりを制作していった。
割り箸をつなげたり、くっつけたり。これ1つが角材にも見えてきて、作っているうちにスケール感が狂ってくる錯覚を覚えた。15mの5分の1のつもりなのだが、模型のドブネが150mくらいある船にも見えてくるのである。
蔵の中のテーブルの上に、いきなり巨大造船所が出現した。どこからともなく「できるものなら浮かべたいね」という声もわき起こり、さてさてこれからどうしましょうか?
10月の9日に完成予定です。1か月かけてヒミングのみんなが制作していきます。船を作る時間が楽しいんだよね。はい、では、ドブネが浮かぶことを夢見て!!
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