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日本海の蛸壺漁に出かけた。84歳の漁師は私が蛸壺からタコを取り出すのに手間取っている姿をじっと見ていた。私の右手は壺の中のタコをつかみ、私の左手はタコを入れる細かいメッシュの袋を持つ、私はタコを壺から袋に入れようとするのだが、タコは必死で逃げようとする。私の2本の両手は塞がっているの、しかし相手のタコの手は8本。2対8で圧倒的にこのゲーム? は私にとって不利な展開である。気がつくとタコの手は私の上半身に絡みつき、肩に、首に手を回す。メッシュのタコを入れる袋には、私の右手だけが入っている。まるでマジック!
師匠の漁師は私がタコを袋に入れた時点で、その袋を受け取り、素早くその口を紐で結ぶ態勢になったまま、その試合の流れを観戦していた。船に乗る前に漁師が私に言いました。「毎日が、タコとの知恵比べ」。
蛸壺に餌を入れるわけではない、疑似餌で誘うわけでもない。ただ壺を海底に沈めておくだけである。この漁師町では子供時分からみんながそれぞれの蛸壺を開発して、タコを捕まえては小遣い稼ぎをしていたそうだ。空き缶
、竹筒、瓦の2枚合わせ、やかん、などなど、どんな形状だと蛸が入りたくなるのか、そして逃がさないように引き上げられるのか。
その日、漁が終わってから私は蛸壺を作った。その村の蛸壺漁をやったことがないという人たちを集めて、それぞれの蛸壺をつくろうと呼びかけて、蛸壺ワークショプを開催した。完成したらみんなでMY蛸壺を海に仕掛けに行って、翌日にまたみんなで引き上げに行く。
「次はマスオさんが作った蛸壺を引き上げまーす、さて蛸が入っているでしょうか? …ざんねーん、入っていませんでした。次はサザエさんの蛸壺を引き上げまーす、入っているかな…わおーー! 入ってました!」きっとその時サザエさんは、タコの気持ちを理解した気分に一瞬になるでしょう。そしてマスオさんは、リベンジに燃えることでしょう。タコを捕まえるためではなくて、今日の蛸壺は、タコの気持ちを想像するための蛸壺つくり。そして海の中を想像する道具としての蛸壺つくりでした。
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