瀬戸内海の粟島に海員学校が昔ありました。この教室のサイズが5間×4間。廊下の幅が1間。4つの教室が廊下で繋がっています。なので廊下を含めたこの校舎のサイズは幅が5間で長さが20間。つまり9m×36mです。これに気が付いた時、私は衝撃に襲われました。イメージが湧く瞬間という体感はそう簡単には味わえないし、大概の場合、目指す姿が現れてくる過程は一定ではなく、行き過ぎたり、戻りすぎたり、右往左往、行ったり来たりしながらなんとなく見えてくるものなのですが、今回の場合は白昼夢のようにいきなりその姿が見えて来たのです。それがこの9m×36mのサイズを確認した時でした。
私はこの1年くらい、この場所でタラ号という海洋科学探査船の展覧会を行うことを考えてきていました。タラ号とはフランスのロリアン港を母港とし、世界の海の環境を科学者とそしてアーティストが乗船し、実際の大海原の現場体験をもとに作品を制作し発信するアート活動も行っている科学探査スクーナー船です。タラ号が最初に日本に来た2017年に私も乗船しました。その時にタラの乗組員たちを粟島に案内したのがきっかけで、粟島にタラ号の拠点をつくろうという話が進み、そのキック・オフとして展覧会を企画し始めたということです。
6月8日に粟島に行った際に旧粟島海員学校の教室の採寸をし、長さが36m、幅が9mと知った時、このサイズの数字に記憶があり「このサイズはタラ号のサイズとピッタり同じだぁーー!」と思わず誰もいない校舎の中で声に出してしまいました。実際の船の上にいた時に感じていたサイズより、大きく感じられ、「タラ号ってこんなに大きかったんだ!」この今私が感じている体感を、来場者にも感じてもらいたい! そのためには! いろいろアイデアが湧いて来ました。
まずは船の平面図を床に描く。壁には海洋の写真、そしてVRなどの機材も駆使してみる。海員を養成していたこの校舎を船に見立てて大海原を想像して、海洋環境のことを考えるノ。見えない海の中を、未来を見る力が、アートにはあるのです。
この展覧会は9月28日から11月4日まで行われる、瀬戸内国際芸術祭秋期で発表します。
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