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ヒビノホスピタルvol.68が2月6日に行われた。これは私が茨城県内各地で1998年から行っているワークショップ。今回のタイトルは「探し物を見つけにノ」午後1時半に北茨城市大津港にある「漁業歴史資料館よう・そろー」に参加者が集まりました。
3歳から86歳、学校の先生、中学生、親子連れ、障がいを持った方など、色とりどりなメンバーです。6つのグループごとに机を囲んで、まずは自己紹介。その際のキーワードは「私がなくしたもの、忘れたもの」。初対面
同士でも、なんとなくその人となりが見えてきます。
「年末に結婚指輪をなくしたんです。銭湯かなと思って探したけれど見つかりませんでした」「忘れ物はしたことがありません!」などなど。笑い声も聞こえてきて、最初の緊張感も次第にほぐれてきました。
「よう・そろー」には地元の祭りに登場する大きな木造船が展示してあります。東日本大震災の際にはこの施設も水に浸かり、この地域では死者五名、行方不明者1名という被害を受けました。復活するまで2年半がかかり、再開後には震災を伝える展示が加わりました。海には宇宙の大きな大きな地球サイズの時間から、私たちの記憶のヒトのサイズの時間まで、波が今日も刻み続けています。
自己紹介がてらの忘れ物話の次は、浜辺に移動します。そこで自分の忘れ物、なくしものを探します。浜にはいろいろなものが流れてきたりしています、そのなかでふと自分の目に止まり、手にするものには、何か自分が探しているものと似ていたり、なぜだかなくしたものだったりするのかもしれません。この日はまだ寒く、突然みんなでおしくらまんじゅうもしました。それもこの日の記憶にもなっていきます。
「よう・そろー」に戻り、拾ってきたものをスケッチします。貝殻、流木の定番から、プラスチックのキャラクター、電球、網などなど、こまめに観察して自分の探してみつけたものを描写
します。そしてその絵に「しかし、それはまるで、私が昔なくした…のようだ。」の書き出しでお話を書き添えます。
次に自分のものが隣の人が探してきたものに変容していく形を想像してスケッチし、それに「それから…年が経ち。それは…になりました。」と書き添えます。これをグループ内でつなげていくと、6人がループした「忘れ物を探しにノ」の物語が出来上がります。
(以下一部抜粋)
しかし、それはまるで私が昔なくした小さかった時の手のひらの貝のようだ。そしてそれから十7年が経ち、それは空に向かってがんばって羽ばたいていこうとするようになりました。しかし、それはまるで私がなくしたココロのマッチのようだった。そしてそれから30年が経ち、それは、ひとつの芽を出したかと思うと、ニョキニョキと空を目指して育っていきました。
きっといつまでも、なくしたりして、みつけたり、忘れたりして、探したりは続いていく…。
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(アーティスト) |
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